出汁の効いた、味わいのある男の人生
- 百兵映 さん
- 2015年6月8日 16時29分
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明治か大正時代のものかと思ったら、太平洋戦争や伊勢湾台風が出て来るので、これはせいぜい私らの父母の時代だ。そうか、浪速の商売(商家)ってこういう具合だったんだ。意外と古くて新しいんだ。子どもが単身で丁稚奉公の就活をしていたんだ。
苦労・根性の物語はあまり好きな方ではないけど、これは面白かった。俳優・森繁久彌のキャラが、どっかホッとさせる。彼の名前は吾平。
(脱線;殆んど関係のない話だが、『路傍の石』の主人公は吾一。これまた商家の使用人で悲哀を舐めている彼に、学校の先生が「君の名前は吾(われ)一(ひとり)、世界にたった一人の人生を大切に」と諭す。この先生、『暖簾』の吾平にはどういって励ますのだろう、……などと関係のないことに思いを至らせた。)
簡単に成功物語にならないのがこの時代のこの世界の根性物語。ここでは戦争と災害にぶち壊される。だからといって反戦ものにはならない。悲愴な泥仕合いにもならない。二人のいい女性に支えられて、(森繁氏でなくても)まんざらでもない男冥利?
商品の昆布に埋もれて息を詰まらせるなんぞは最高やおまへんか。味のある人生でんな。
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