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炎上

炎上

99

xtj********

5.0

人間の心の闇

国宝の建造物に放火をしてしまった青年の心の動きが、とても冷静に丹念に描かれていた。 やはり、脚本の和田夏十のストーリーテーリングはすばらしい。 物語の中で、時間がいったりきたりする。 時間が変化するとき、年代を字幕で表したり、「そう、それはあの時・・・」とか言わせて時間移動する事が多いが、この作品は、とてもシンプルに説明している。秀逸なのが、戦争が終わったという描写を進駐軍の人たちで説明していた所。見ていて何の違和感無く時間が移動するのである。 どうして、あの青年が放火をするようになってしまったか? その青年の心の闇は、最後の最後まで分からない。「どもり」というコンプレックスと「どもり」を嘲る無理解な人たち。そして、複雑な家庭環境などなど・・・。表面的要因はいくらでも挙げることができる。でも、それでも分からないのだ。 この青年の心の闇より他の登場人物の心の方が、僕は怖く感じた。 あの純粋な少年が、周りの人間の醜い心に振り回され、彼はどんどん自分の世界に閉じこもるようになる様を見せられると、結局「あの青年が放火をしても、それはそれで仕方なかったのかもしれない」と僕は思ってしまった。 「わかってくれへん・・・誰もわかってくれへん・・・」 青年は国宝の建物を見つめながらそう呟いて、火を放つ・・・。 ここで放火の是非は問題ではない。問題なのは「心」であり人間のリアルな姿だ。誰が悪いとかの話ではなく、「人間とはこんなものだ」という一種の諦めた感じだ。 そういう意味では、時間の経過説明を極力排除している描き方は成功していると思う。簡単に言えば、主人公の心の動きが途切れる事無く伝わってくるのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 所で、音楽を担当したのは黛敏郎。オープニングから黛節全開のスコア!アブストラクトな打楽器のような音は一体なんの音なのだろう??芥川也寸志は叙情的な雰囲気だが、黛は重厚な感じだ! そして、やはり若き日の市川雷蔵!ドモリというコンプレックスを持ち、内面へとずぶずぶ入り込んでしまう悩ましい青年を見事に演じていた!他にも中村雁治郎、仲代達也、北林谷栄などの演技も見所だ!

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