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炎上

炎上

99

kih********

3.0

そんなに美しいのですか、金閣寺って。

 どうも好きになれない。吃音はそれほどまでに障害になるのだろうか。製作者も観客も、どこか吃音を蔑んではいないか?  どうも好きになれない。金閣寺ってそんなに美しいだろうか。美しくはあっても、これに心身が吸い込まれるほどに美しいだろうか? 美に溺れ、身を焦がす人物が、その名刹に火を付けるってことがあるだろうか。  私は門外漢だからとやかく言う理由はないが、感覚的に「好き」になれないだけのこと。火を付けるのだったら寧ろこのような門外漢じゃないのか。  金閣寺消失は大きな事件だったことは間違いない。その真相を知りたいのは誰だって同じ。ただ、その謎解きをやる場合、史実のどの部分を強調するかによって、全然意味合いが異なってくる。作家の中にある主義主張、好き嫌いがもろに出る。そういうものなのだから、見る側も遠慮なく好き嫌いで判断し、反論をぶつけていい。  『五番町夕霧楼(1980年版)』では、修行僧が、「将軍が金に任せて作った(豪奢な)寺を、後の(貧しい)僧が“守る”というのはおかしい」という。後付けの理屈かもしれない。それでも、これには説得力がある。吃音についても致命的障害のようには強調されていない。むしろ終戦直後の貧困社会の矛盾の一つとして著名寺院の高僧や観光化の堕落ぶりなどを遊郭から描いている。『五番町…』は五番町から見た金閣炎上だが、それでは本作『炎上』はどこから眺めたものか、その立ち位置はどこか。  同じ金閣寺を題材にしながら、断然『五番町…』の方がいい。貧しき者の目線で金閣の真相に迫っている。

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