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炎上

炎上

99

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3.0

金閣寺といわない理由

いろいろあったんだろうなぁと思ってしまう映画です。三島由紀夫「金閣寺」の映画化なのですが、あれほど有名な本を元にしながら、それと名乗れない理由。まず、金閣寺からの注文があったのだとは思います。三島自身が、現実の事件を小説化するとき、金閣寺には取材できなかったといっていたと思います。 映画は小説に忠実で(つまりドモリの青年が金閣寺を燃やす話)、そのせいで、削った部分が唐突すぎて原作を読んでいない人には不親切なくらいですが、それでも小説のタイトルをつけなかったもうひとつの理由は、中村雁治郎だと思います。市川雷蔵よりもキャラが立ってます。小説ではほとんど描かれない内面が描かれていて、雁治郎演じる和尚さんの心の悩みの映画にも見えます。雷蔵演じる主人公の内面なるものが小説に比べて弱すぎるということもありますが。 あとひとつ、タイトルが金閣寺ではない理由は、金閣寺が美しくないことです。セットでつくったのでしょうが、小説に描かれる「美そのもの」にまったく見えない。唯一、ラストで燃えている金閣が、ほとんど灰か粉になって舞っている映像だけが美しかった。 結論=小説のほうがおもしろい。

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