レビュー一覧に戻る
彼岸花

彼岸花

118

Kurosawapapa

5.0

娘が結婚する時の 父親の指南書☆

小津安二郎監督作品を鑑賞するのは、かれこれ15作目。 この「彼岸花」、どこかで見たような、、、と思ったら、同じ小津作品の「秋日和」とそっくり。 というのも、 *原作者が同じ *両作とも結婚する娘を送り出す話 *佐分利信、中村伸郎、北竜二、この3人組が旧友という設定が同じ *小料理屋「若松」、バー「ルナ」など、両作に同じ名前の店が存在 また、「彼岸花」は結婚式から始まり、「秋日和」は葬式から始まり、 「彼岸花」は父と娘の関係、「秋日和」は母と娘の関係を描いている。 それゆえ、「彼岸花(1958年)」と「秋日和(1960年)」は、 姉妹作と言えるのかもしれません。 冒頭、ドーンと映し出される東京駅。 「秋日和」の冒頭は、東京タワーだった。 さすが小津監督! 他にも、ビルや店の看板など、フィックス映像の数々。 ・空舞台(フィックスによる風景カットの挿入) ・台詞回し ・ローアングル ・バストショット 見慣れると安心感さえ覚える小津テクニック。 ======= 平山(佐分利信)は娘の節子(有馬稲子)には、良い縁談をと考えていた。 しかし、ある日突然、節子との結婚を認めて欲しいという谷口(佐田啓二)が平山の会社を訪れる。 平山は、娘が相談も無しに結婚の約束をしたことを知り、激怒する。 そんな結婚を許さない平山のもとに、友人の三上(笠智衆)が、自分の意志に背いて娘が愛人と同棲していると相談にやってくる。 ======= いつもは温厚で冷静な役が多い佐分利信。 今回の怒った顔は、相当の迫力。 自分も、娘がいる身。 そんな平山(佐分利信)の気持ちは、よく分かる。 そういえば、佐々部監督の映画「結婚しようよ」では、こう言っていたっけ、、、 *娘の結婚式で流す母の涙は、友情の涙 *娘の結婚式で流す父の涙は、恋人の涙 父親にとって、娘は永遠の恋人。 それを、どこの馬の骨とも分からない男に奪われるというのは、たまったもんじゃない! しかしそんな平山も、友人の娘の結婚には理解を示す。 人の娘のこととなると、冷静に相談に乗り、 「幸せになることが一番」と、娘の味方になったりする。 結局は、 “自分のことを棚に上げて” ということになるのだが、 それが世の常、普遍的父親像であることを、小津監督は見事に描き出している。 本作で一興を感じたのが、 “トリック” なる くだり。  “悪人” や “嘘” は、ほとんど存在しない小津映画だが、 今作は、実に大胆な脚本と言えるかもしれない。 家族内のもめ事は、愛情の裏返し☆ 娘が結婚しようとする時、冷静なのは母親で、あわてるのは父親。 「秋日和」の原節子と本作の佐分利信を比べてみると、それがよく分かるし、 父親も母親も、そんな姿が奥ゆかしい。 自分も一人の父親として、 娘を嫁に出すなど 考えたくもないのだが、 もし将来、「 娘さんをください 」という人間が現れたなら、、、  “娘を持つ父親の指南書” として、 再び この映画を見なければいけないだろうな〜、、、と思う。 今作、1人の父親として多大なる感情移入。 デジタル修復版の映像も素晴らしく、 小津テクニック、 優れた演技、 そして溢れ出す家族愛、 ☆ 文句無しの☆5つです!

閲覧数1,427