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彼岸花

彼岸花

118

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3.0

予定調和とわかっていても

娘を嫁に出す親、いわゆる「花嫁の父」を描いた古今東西の映画って、娘の結婚になんだかんだ反対しても、結局、最後は許してしまうっていう、ある種、予定調和みたいなものがあるんだよね。ぼくも含めて、みんなそんなことは百も承知でこの映画を観て、「ああ、良かったね」って思うんだろう。 佐分利信と田中絹代の名優二人が花嫁の父と母を演じているんだけど、頑固親父の佐分利信が、実は女性たち――妻や娘はもちろん、娘の友人や自分の親友の娘たちに手玉に取られているところがおかしくも悲しい。この映画に登場する、旧制中学校を卒業したエリートで、軍隊に入っても戦地に赴くことなく内地で終戦を迎え、その後は企業のエグゼクティブとして戦後日本を牽引してきた男たちの誰もが、実生活では女性たちの手の中で踊らされているんだね。 あいかわらず上流家庭が舞台だけれど、畳生活が普通だった、昭和の、まだ古い風俗や生活描写が懐かしい。帰宅するなり着ていた背広を放り投げ始める男、手際よく着物へと着替えさせる妻。それを当然と思っているから、女性にしてやられたときの戸惑いは喜劇となるのだろう。客を早く帰らせるおまじない、逆さに立てかけた箒を、フンッとばかりにもとに戻す浪花千栄子の達者な演技にも舌を巻く。 話は変わるけれど、昔、深夜放送「パック・イン・ミュージック」の「お題拝借」で「瀬戸の花嫁の父」の手紙が話題になったけれど、覚えている人はいるかなぁ。

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