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荷車の歌

Kurosawapapa

4.0

希少☆山本薩夫監督が描く女性ドラマ

冒頭のテロップ、、、 『 人間が人間として認め合う、この大切な喜びを皆のものにしたい。 この喜びが多くの女性の心に生き継がれ、多くの若い人達が母を受け継ぐ時、 明日を今日の繰り返しでなく、新しい出発としてほしい。 』 そんな願いが込められた作品。 山本薩夫監督というと、反骨精神溢れる骨太な作品を世に送り出した社会派映画の巨匠。 自分の知るところでは、山本監督の女性を中心としたドラマは、本作と「あゝ野麦峠」くらい。 希少という印象ですが、 本作は山代巴の原作、そして溝口監督と組んだ依田義賢(「スターウォーズ」ヨーダのモデルとなったといわれる日本映画を代表する脚本家)の脚本であり、合点がいく。 ======= 明治二十七年、女中のセキ(望月優子)は、郵便配達夫の茂市(三国連太郎)に求婚され、勘当の身となりながらも結婚。 二人は、往復十里の道を一台ずつ荷車を引きながら仕事に励む毎日。 姑の冷たい仕打ちにあいつつ、セキはやがて娘を産みます。 ======= 結婚、出産、子供の成長、 そして年老いてなお、苦難と向き合った数十年の物語。 夫の茂市を演じた三国連太郎の演技は、群を抜いています。 晩年の姿に “歯” がありませんが、 2年前の「異母兄弟」の時、演技のために35歳で10本抜いたそう。 ただ、本作は女性が主役。 望月優子の優れた演技も、彼のあまりの存在感に食われてしまった感。 後半、茂市の浮気が発覚、妾を家に居候させるストーリーも、 前半の繊細な流れに対し、行き過ぎを感じます。  姑、 嫁、 娘 が同居する中、 家族なのに、思い通りにならないこと、やっかみ、愚痴をこぼすこともある。 また、嫁にしてみれば、  我が子 ~ 夫 ~ 姑 と、どうしてもついてしまう優先順位。  “心の虫が騒ぐ” と、身内の不遇を横柄に見てしまう、、、 そんな心の内も、赤裸裸に描かれている。 皆、必死に、ギリギリの生活を送っている、、、 その張りつめたような空気感。 そして、張りつめたものがプツンと切れてしまった時に、溢れ出す涙。 苦難の中にある、人の “優しさ” が、心を打ちます。 家族の繋がりが、 時として、しがらみとなり、 時として、かけがえのない ”絆” となる。 どう転んでも切ることがでないもの、、、 それが “家族” なのだと、 しみじみ感じさせる名編です。

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