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荷車の歌

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4.0

農地解放と女性解放、そして農村文化向上

1959年の作という。つまり敗戦後14年目ということ。農地解放後10年目ということ。冒頭に「この映画は三百二十万農村婦人の手でできあがりました」という紹介字幕が出る。「明日を今日のくりかえしでなく新しい出発としてほしい」という「願いをこめて」作られたのだそうだ。  気になるのが「全国農村映画協会」という「製作」者(社)。インターネットにホームページが開かれている。昭和24年設立の株式会社だった。それによると「農業関係の映画・ビデオ・DVDなどを企画・制作・配給して農村文化の向上に寄与」しているという。結構なことだ。  いくつもの映画で、農山漁村の旧弊や閉鎖性、そして差別意識というのは見てきたが、これは「農協婦人組織」が企画して、「農村文化の向上」を目的に、「農村映画協会」が作ったという点でユニークだ。農村の農村による農村のための映画だ。  本作の中にもチラっと出てきた「農地解放」。これは1947年(昭和22年)から1950年(昭和25年)までのことだから、全国農村映画協会の設立はその最終段階の時期ということになる。農村は農地所有権と共に一応「解放」される。この期を逃さず農村の精神的な「解放」も一気に進めようという、そういう意図であったのなら、素晴らしい会社だ。その具体的な活動の一環であれば、素晴らしい映画だ。  あれからかれこれ70年近く経って、農村は真に解放されたか。文化は向上したか。農村の過疎化、高齢化をみると、解放とは縁遠いように見えるのだが……。こういう映画をみたら農村に住みたい女性は居ないだろう。冒頭の字幕でいうように、「多くの女の心に生きつがれ、多くの若い人たちが母をうけつぐ」農村文化の「喜び」が無い限り、再生も解放も無いように思えるのだが……。

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