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アラン

アラン

MAN OF ARAN

77

bakeneko

5.0

ネタバレフィクションとノンフィクションの狭間

アイルランドのアランのイニシュモー島で、過酷な環境の中に生きる人々の自然との格闘を捉えたセミドキュメンタリー的な映画であります。 この映画、何よりも凄い光景の目白押しであります。 土が存在しない岸壁と断崖だけの島の構造 至る所に凶暴な波が打ち付ける様 世界で2番目に大きな魚(12m)であるウバザメが直ぐ足下を泳ぐ映像 懸命に荒海を漕ぎこなすカヤック(まるで北斎の浮世絵の様です)等…。 劇映画ならば、“物語の脇役&設定”としていろいろな技術で作られる自然が本物の迫力で見るものを圧倒して、希有な映像に対峙した際の驚きでわくわくさせてくれます。 この映画は今日のドキュメンタリー作品の基盤を作ったロバート・J・フラハティの最高傑作&代表作であります(彼には他にも、小犬ファン必見の「極北の怪異」等があります)。その手法は“限りなく記録映像に近く”作為された映像からなる“凝縮した現実”の提示であります。つまり、幾つかの自然事象は同時期に起こり得なかったり、ウバザメ狩りは記録した時期には廃れていたものでありますが、纏めて整理して見せてくれることで、映画全体の印象としては(現実そのままよりも)より過酷な現実の本質を表すことが出来るのであります(以後この方法はリーフェンシュタールらによって更に洗練され、やがてイタリアのモンド映画の“やらせ&インチキ映像”へと発展していきます)。 そして、本作が記録映像的印象を強く与えるのは、“画面の静謐さ&人工的なドラマ性の希薄さ”にも由来している様であります。人間(製作サイド)の都合による取って着けた様なテーマと物語が存在しないことに依って、返って自然と人間の存在の真実が浮かび上がってくるのであります。 希有な映像に依る力強い映像に驚かされる作品で、物語性が無くても十分凄い映画が出来ることに気づかせてくれる70分の地球の最果てへの旅であります。 ねたばれ? ウバザメはジンベイザメと同様プランクトンを食べていますから、あまり怖い存在ではないのですけどね。

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