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アラン

アラン

MAN OF ARAN

77

ckr********

5.0

アイルランドの孤島

「アラン」は”ドキュメンタリー映画の父”と呼ばれたアメリカの映画監督、ロバートフラハティの1934年製作の映画だが、この作品はドキュメンタリー映画ではなく、記録映画の要素とフィクションが混じりあった稀有な映画作品である。映画の舞台はアイルランド西部に位置する住民1200人足らずのアラン島。自然の猛威と闘いながら生活する島民の姿を1年半に及ぶロケで描いている。フラハティ自ら撮影を担当したという映像は、自然の脅威を見事に捉えた迫力ある映像になっている。CG使用の迫力ある映像も結構だが、クルーゾーの「恐怖の報酬」や、この「アラン」のような実写撮影による緊迫した映像は、何より映画の原点を思い起こさせてくれる。主人公の少年や母親、父親役を演じているのは現地に住む実際の親子で、決して演技がうまい訳ではないが、自然なかたちで映画の中にとけ込んでいる。数十メートルの断崖絶壁に巨大な白い波しぶきをあげて荒れ狂う海。5人乗りの手漕ぎの舟に乗り込み、暴れ狂う巨大ザメと格闘する漁師たち。漁に出ない春の季節は、主食のじゃがいも作りのため、岩を砕き、海から大量の昆布を背負い畑の土壌づくりに励む。主人公の少年は目も眩む断崖絶壁から、器用に釣り糸を海に投げ込み魚を釣り上げる。自然の猛威と闘いながら、人間の知恵と工夫で自然と共存しつつ生きていく姿に深い共感を覚えた。フラハティは「極北の怪異」(1922年)という、イヌイット(エスキモー)を描いたドキュメンタリーの傑作も撮っており、ジョンフォード(フォードの両親はアイルランド出身)とも、親交厚い間柄だったという。

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