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妖刀物語 花の吉原百人斬り

kin********

5.0

豪華絢爛な悲劇

 池袋文芸座で「血槍富士」と鑑賞。本作は戦後の復活作「血槍富士」から5年経ち、たどたどしさはすっかり払拭され、さすが内田吐夢という流麗な仕上がりになっている。  依田義賢の脚本は緊密に組まれていて、主人公の首を真綿で絞めるように徐々に追い詰めていく。人並み以上に常識人である男が狂気に至る過程に有無を言わせぬ説得力がある。随所に吉原の風俗を再現した華やかな見せ場もあって、贅沢な映像は飽きることがない。  唯一私が違和感を持ったのが、主役の片岡千恵蔵。いくらなんでもフケすぎじゃないだろうか。役の設定は三十歳とセリフにあったと思うが、もう五十を越えているように見える。まあ当時の大スターだから、同時代で見ていれば違和感はなかったのかもしれないが、例えば市川雷蔵だったらずっと傑作になった気がする。  一方の水谷良重はまさにハマり役。見惚れるような演技だった。ほかに、木村功、三島雅夫、沢村貞子など、脇役陣も見事と言うほかない。  日本映画黄金期の、価値ある遺産と思う。

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