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笛吹川

笛吹川

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kor********

4.0

ネタバレ悲しみが川のほとりに流れ着く

現在の山梨県に位置する富士川水系の「笛吹川」は暴れ川で有名であり、台風や洪水の被害を受けやすく、そんな川のほとりに家を構える事で主人公家系の家柄が容易に理解できるかと思います。時は戦国時代。甲斐国を治めるは武田家。仕える一族・そして武士を支える農民のなれの果ては時代を考慮すれば致し方ないことかもしれませんが、木下恵介監督が生涯描き続けた「親が子に捧げる無償の愛」というメッセージ性と、原作者深沢七郎の濃密なストーリー性が非常にマッチしている一作だと思いました。 そして、骸が所狭しと横たわる紫色の冒頭がなんとも妖艶であり、モノクロフィルムに部分的に色を焼きつける手法はとても斬新であります(当時カラー映画は普及されている中で)血は赤、空は青などわかりやすい色使いもあれば、黄色やオレンジなど意図が読み取りにくい芸術的な色彩感覚は木下監督の独創性が成すものでしょう。 生まれる赤ん坊(劇中では「ぼこ」)がいれば、隣には死に装束を纏いお経を詠む亡霊が存在する。血生臭い呪いもあれば、やっとのことで育て上げた可愛い我が子が名を挙げるべく戦場へ赴く非情さもあり、母親の無償の愛も混在する。止まる事のない死の連鎖や復讐へ歯止めをかけるには、たとえ卑怯と罵倒され、辱めを受けようとも断つことであり、農民として生き続ける事は即ち「反戦」という強いメッセージも持っております。 武田の敗れた旗が川のほとりに流れ着く、反戦を掲げた父が一人取り残されるラストはたまらなく悲しいものがあり、やり切れない気持ちに陥ってしまいます。

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