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笛吹川

笛吹川

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4.0

ネタバレ戦乱の無常を実験的映像とともに描く

戦国時代、戦続きの世に翻弄される百姓一家を描く。 特徴はモノクロ画面が部分的にカラーになっていること。「野菊の如き君なりき」のタマゴスコープや「楢山節考」の様式美世界など、木下恵介は視覚的試みをよく行う監督であるが、これもその一環。ただ本作の実験は「楢山~」ほど成功しているとは言いがたい。 川や死人の顔が青くなっていたり、火や血の部分が赤く染まっているところなどは非常に効果的であるのだが、逆に色が着いているのがわずらわしく感じる場面もけっこうあり、一長一短と思った。 内容的には申し分ない。甲斐国・笛吹川のほとりに暮らす農民一家が、戦乱に巻き込まれる姿を淡々と描き、劇的な感情の高まりは無いが、人生のはかなさ・無常観などがじわじわと伝わり、深い余韻を残す。 戦争の悲惨さを批判的に訴えるというよりも、それも人間の愚かさの一つだと冷徹に見据えており、例えば高峰秀子演ずるおけいの死体が無造作に転がっている場面は、その唐突さゆえに衝撃的でさえある。 じっくり腰を落ち着けて観るべき秀作。

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