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武器なき斗い

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4.0

ネタバレ権力者が利権をむさぼり、庶民が犠牲になる

 この作品はモノクロだが、ラストはカラーである。そこに共産党の旗がはためくところがあり、プロパガンタ映画なんだな、と思ったら白けた。  でも、山本薩夫監督は共産党員だったから、こうなるのも当然のこと、そういう気配は映画が進行中に散見しているのだから、ラストでやっと気がついた筆者はバカなのである。  でも、2時間を越えるこの映画を最後まで見通せたのは、単純に共産党の思想を描いただけではないからだ。そういうイデオロギーを示しただけの説教臭い映画なら、途中で投げ出したくなっただろう。  そうならなかったのは、主人公が性教育を重要視し、また治安維持法という悪法に抵抗して、民主的な社会の実現を目指したところに、イデオロギーを超えた我々の感情に共感できるところがあるからだ。  この共感が無ければ、考え方の違いで、ああそう、で終わるところである。  それと、この主人公のキャラクターが日本人の大半が貧乏の中、お坊ちゃん育ちなのに、虐げられている農民を救うこと、そういうところが純真で真っ直ぐに、いささかの嫌味も感じさせないように描いているからでもある。  これは、主人公を演じた下元勉の演技がすばらしいところにもよる。この俳優は地味で今までどこかで観たことがあるのに、何の映画に出ていたのか、すぐにタイトルが出てこないほどに強い印象を残さない人だ。それなのに、この映画の主人公を演じるために俳優になった、と思えるほど役にはまっている。だから、彼が理想を語っても空々しく聞こえない。心の底から本音を言っていると思うくらいだ。  そのため、以下の台詞はとても胸を打った。 「おとうちゃんはがんばるよ。この子達が大きくなったら、戦争もない、失業もない世の中にするために」

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