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武器なき斗い

bakeneko

5.0

ネタバレ本当に必要な人は政治家になりたがらない!

生物学者にして労働農民党の代議士で、全体主義へ傾倒していく戦前の政府に反対して兇刃に倒れた山本宣治の半生を、俳優座を始めとした舞台役者陣総出で描き出した作品で、安保闘争真っ盛りの1960年に創り上げられたことも大きな意味があります。 カナダで学位を収めた生物学者で、マーガレット・サンガー女史の受胎調節法の紹介や来日したアインシュタインとの対話など、科学的業績も著名な“山宣”こと山本宣治の半生を記した西口克己の原作を社会派:山本薩夫が演出した作品で、当時のニュースフィルムで時代の流れを提示しながら、ファシズムに堕ちていく日本の中で誠実に正義と正当性を貫こうとした人物を描き出しています。 偉い人のお話を教科書的に綴るのではなくて、京都の老舗料理屋の息子として“人生を好きに冒険した道楽者”として“粋人の人生譚”を語るかのような爽やかな人間ドラマとなっていて、家族たちの人情も細やかに書き込まれていますし、官憲や農民たちも血の通った人間として舞台の名優たちが好演していることで、戦前昭和の日本人の群像劇ともなっています。 現在と異なり、堂々と社会主義活動の正当性と自民党の代議士の経歴暴露にタブーが無い時代の作品の特徴として、政治家&財閥&地主が牛耳っていた戦前の日本の機構と、全体主義へ傾倒していく時代の流れが良くわかる作品で、戦後の名宰相と称せられることが多い吉田茂が戦前は天津領事として大陸進出を先導していたことも示されます。 モノクロだった物語がラストにカラーになって、戦後の自由な空気の中で“民主主義の尊重と戦争の忌避”を謳いあげる作品ですが、また戦前の社会状況に逆行していっている現在の時点で観るとまた複雑な思いを感じさせる映画であります。 ねたばれ? 1、戦時中、官憲は墓碑についてはこれは墓ではなく記念碑であるとして記念碑建立の手続きをさせ、数年間許可を出そうとしませんでした。更に漸く建立後も 碑文について文句を付け、セメントで塗り潰しましたが、碑文を塗り潰されては有志者達に密かに剥がされる攻防戦が何回も繰り返されています(映画の冒頭のシーンはこの様子を描いています)。敗戦後の1945年12月、戦後最初の追悼墓前祭でセメントが取り外され、名実共に復旧しました。 2、山本宣治の実家:「花やしき浮舟園」は歌人・文学者・芸術家たちの定宿となるなど、相応の格式を持った旅館で現在も営業中であります。 3、治安維持法って再改正?を繰り返して、(最後には死罪を執行できるほど)どんどん権限アップしていったんだ!(特定秘密保護法も放っておくと…)

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