レビュー一覧に戻る
秋日和

秋日和

128

とみいじょん

4.0

原さんの美しさ…ホームコメディの安定感

小津監督の映画を初めて観ました。原節子さんの映画も初めて観ました。うん、外国人が好きそうな映画だな。外国人が描く理想の日本の形があるなと思いました。 物語自体は特に目新しいものはない。昭和、テレビのゴールデンタイムを飾っていたホームコメディにもありそうな物語。『寺内貫太郎一家』とか『時間ですよ』とか『ありがとう』とか。ちょっとお節介な人々に巻きこまれた人々のドタバタ劇。なんだかんだと言ってハッピーエンドになるのも同じ。(あ、年代的にはこの映画の方がTVドラマより先か)   でも、なんか違う。TVドラマが、ちょっとこげたゴロゴロのサトイモの煮っ転がしが器にドン!と大盛りに盛られているイメージなのに、この映画は有田焼等の器に美しく盛られた海老しんじょ、彩りも鮮やかなシシトウ付き。TVドラマが胡坐かいて頂くような感じがするのに対して、小津作品は正座していただくような感じ。といってもかなりリラックスしてお茶を片手に鑑賞できるのだけど。 この当時に大卒という大企業の部長や教授クラスの伯父さま方という超エリート、上流階級を扱っているから? だけでなく、ウィキペディアによると、部屋の絵とか本物を使って撮影しているとか。そういうこだわりなどに現れる演出が、その雰囲気の違いを醸し出しているのだろう。言葉使い、抑揚、間、声の高さ・出し方そのすべてが洗練されている。「ごきげんよう」の世界。個人的には、上流階級の奥様方が「あんた」というのは好きではないけど、あの当時はそれが普通だったのだろう。 原節子さんは絶世の美女との評判の高い方。   個人的には正直あまり美人には見えなかった。きゃしゃな司さん、岡田さんと並んでしまうから余計に原さんの大柄が際立つ。年齢的に若いお二人よりふくよかになられるのはしょうがない。ふくよかになったから大柄というのではなくて、意外に口大きいな、手も大きいな(白魚のような指とは例えがたい)、全体的に男性のような骨格をされているな、背も高いし。意外に所作が雑だし。中村玉緒さんの若い頃が文楽人形の娘の頭にそっくりなのと比べて、原さんは日本人離れしている。あえていうなら、マレーネ・デートリッヒ系。三輪明宏さんにも似ている。やっぱり美女か、と思いながら観ていました。そんな方が、日本的な家屋に日本の着物着て収まっているから、縮こまって窮屈に見えるのかと。   ああ、でもラストの場面。娘を嫁に出して、一人で寝支度する場面、あのほっと一息つく場面の美しさ。艶。円熟した色気。情感の細やかさをあれだけで表現してしまうその演技力。やっぱり美しい人だなあと感動しました。う~ん、年と美しさって重ねるものなのね。 今美魔女とか流行っているけど、日常のああいうひとコマに凝縮される美を丹念に描き出す。 視聴し終わってすぐはニ度見はしないかもと思っていた。けど、時が経つにつれて時々見直したくなる映画です。 小津監督ってすごいです。

閲覧数1,243