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熱愛者

bakeneko

5.0

ネタバレ夢と恋とは醒めるもの

戦後の無感動な若者を指す:アプレゲール(アプレ)という語を流行らせたことで有名な、作家&評論家の中村真一郎の同名原作の映画化で、熱愛醒め期&結婚初期に明らかになる“男女の感覚のずれ”を精緻に活写した“恋愛&人生箴言ドラマ”の佳作であります。 そろそろお互いの“幻想の霧散”と“エゴイズムの発露”に気が付き始める―“恋の盲目期”&“相手に対する過剰奉仕期間”の末期の恋情心理を真面目に解剖して、“男女の機微&生理的違い”を白日の下に見せてくれる作品で、 同じテーマは、 イタリア映画だったら―「アルフレード・アルフレード」の様な艶笑喜劇に、 アメリカ映画だったら―「アニーホール」や「マンハッタン」の様な私小説的ラブコメディに、 フランス映画だったら―エリック・ロメールの箴言シリーズの様な洒脱な人生の訓話に、笑いで包みつつ明るく描かれています。 本作は邦画らしく生々しい愛欲表現の中に生真面目に“恋愛感覚のずれ”を描いていて、笑い飛ばさない真っ正直さが、日本的な不器用で正直な恋愛感覚を見せてくれます。 主人公:芥川比呂志&ヒロイン:岡田茉莉子のカップルに加えて、桑野みゆき、小池朝雄、園井啓介、月丘夢路、千之赫子、山村聡らが賑やかに恋愛交歓図を見せてくれる作品で、特にコメディモチーフである月丘夢路の嫉妬深いオペラ歌手の執着と、ヒロインの姉の乙羽信子の恋愛ロマンをぶち壊す生活臭には笑わされます。 岡田茉莉子さんが自分で作品を選んでプロデュースした作品で、“王道メロドラマのヒロイン女優”がこの様なアンチロマンチックで明晰な作品を創ったこともちょっと驚きであります(いつも恋至上主義的物語のヒロインばかり演らされていた反動かな~)。 もちろん“夫婦の機微”を描いた名匠である成瀬巳喜男の作品には名編が沢山ありますが、その多くが“恋の熱狂時期が醒めて久しい”倦怠期の夫婦を描いたものですので、本作品の様な恋愛の燃焼時期の“炎や灰に変わる瞬間”を描いた作品は稀有なものなのであります。 若い人から年配まで恋愛経験者は思い当たる“恋愛の苦い心理”をリアルに描いている作品で頷きながら見入ることが出来ると思います。 ねたばれ? 1、歌唱場面の音楽はヘンリー・パーセルの曲であります。 2、昔の家屋では、雨戸はああやって戸袋まで動かしていました。

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