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街に気球があがる時

bakeneko

5.0

ネタバレ当時のアドバルーンの中は水素だったんだ!

有吉佐和子の「青空の歌」の映画化作品で、苦学生たちと弱小宣伝会社社員のアドバルーン宣伝事業の奮闘を通して、1961年の日本社会の空気感覚を浮かび上がらせています。 アルバイトで学費と生活費を稼ぐ学生:川本保夫(長門裕之)は、アドバルーン広告会社の“青空広告会社”にアルバイト口を見つける。弱小資本の自転車操業、更に仕事は天候に左右されるという、吹けば飛ぶような会社だが、尾形専務(佐野浅夫)を始めとした社員は良い人ばかりで、ただ一人の女性アルバイト:丸根敦子(吉川和子)だけがバイタリティを発揮していた。慣れないアドバルーンの扱いにも慣れた頃、保夫は敦子が同じ大学の苦学生であることを知る…というお話で、原作者の有吉佐和子の分身の様な天真爛漫で勝気な女学生を吉行和子が快演しています(ラーメンの食べ方が豪快♡)。 現在では垂れ幕宣伝に押されてあまり見かけなくなった、アドバルーンのノウハウが興味深く、当時の様子を映した“銀座の空に林立するアドバルーンの大群”にも驚かされます。 そして1960年安保闘争の直後の学生の社会や政治への怒り&脱力感や、高度経済成長に向かって発走した日本社会の活気も封入されている作品で、当時人気だった実存主義哲学も出てきます。 学生を主人公にして当時の世相と若き日の日本を爽快に描いた70分の掌編ですが、新人時代の武内悦子や9歳の江木 俊夫、由利徹、渡辺篤、森川信、下條正巳、下元勉…も顔を見せている作品で、法政大学の光景も映し出されていますよ! ねたばれ? 1、敦子が保夫に尋ねる台詞:“6月15日に何をしていたの?”は、1960年6月15日のことで、日米安全保障条約改定案の自然承認を昭和35年6月19日に控えてデモ隊と警官隊が衝突し、東大4年生の樺美智子さんが死亡しました。 2、敦子が歌う―“若者よ、 身体を鍛えておけ…”は、歌声喫茶で当時の左派学生の間に流行った「若者よ」で、太平洋戦争中に投獄され獄中生活を非転向のまま送った日本プロレタリア作家同盟書記長:西沢隆二が、戦後出獄から日を経ずして出版した詩集『編笠』に収録された一遍にペンネーム“ぬやま ひろし”として曲を付けたものです。 3、地上にアドバルーンが置いてあったら、そりゃあ子供は大喜びで乗るわなあ~

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