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二人の息子 (1961)

監督
千葉泰樹
  • みたいムービー 1
  • みたログ 9

4.00 / 評価:8件

不幸のてんこ盛り

  • nqb******** さん
  • 2012年10月3日 3時57分
  • 閲覧数 706
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

 健介(宝田明)は一流企業に勤める営業マン。妻葉子(白川由美)と幼い娘と海辺の団地に暮らしている。一方、実家の父赤木信一郎(藤原釜足)は、裁判所の臨時雇い。上司とのトラブルがもとで突然退職してしまう。借家住まいの一家はとたんに貧窮。しかし、長男である健介は家への経済支援を拒否。そこで父と同居する次男正二(加山雄三)は一家の家計のため、タクシー会社をやめ白タクを開業することにしたのだが…。

 ほぼ全編、これでもかというぐらい「金」の話が連なり、中盤からはたたみかけるかのような不幸のてんこ盛り。しか~し、オイラは実は松山善三の脚本には問題があると見ている。その理由はあとで書く。

 小学校の校長をしていた父親の赤木信一郎は、教育者としては立派だったが、お人よしで他人の負債を抱え込み、一転豊かな暮らしを失い年金も借金のかたに取られてしまい今は借家生活。定年後は裁判所の臨時雇いをしている。ところが元教え子の殺人事件に関して教育論の違いで上司と口論になり勢いで裁判所を辞めてしまう。そして暮らしが立ち行かなくなり、長男の健介(宝田)に金の無心に行くところがこの映画は始まる。

 次男の正二(加山)はそうした家の困窮を憂い、勤めていたタクシー会社を辞め、違法だが稼げる白タクを始め、一日15時間労働することになる。ちなみに赤木家は三人兄弟で一番下の妹、紀子(藤山陽子)も長男の宝田明と同じ会社のエレベーターガールをしている。ただこの三兄弟は複雑で宝田明だけは、まだ藤原鎌足が騙されて負債を抱える前だったらしく大学は行けたが、加山雄三と藤山陽子は暮らしが傾いたあとの貧乏暮らしを余儀なくされて大学へはいけなかったらしい。この兄弟間の格差が微妙に影を差す。更に宝田の奥さんの白川由美は元バーのホステスで、結婚時には赤木家から猛反対を喰らい、絶縁状態なのだ。

 凄いのが卵のエピソードだ。白タクしてる加山が鶏を轢いてしまい、手にぶら下げて帰ってくる。途中で妹紀子(藤山陽子)と出会う。「あらそれどうするの?」「もったいないから今夜は鶏鍋だ」「あら、今度は牛轢いて来なさいよ」「クルマが壊れちまわぁ」そして家族団らんの夜。ここで父の藤原鎌足が「卵があればいいのに」ってつぶやく。卵は一日15時間も働く加山のために母親役の望月優子がとってあるのだが、加山はそれを父に出すように母に頼む。すると妹が「兄さんなんか一日15時間も働いてるのに、父さんなんかなにもしてないのに」と揶揄すると藤原鎌足はむっとして要らないという。「そう言わずに食べなよ」「要らないよ」卵の押し付け合いをするうちに、卵は割れてしまう。紀子の一言に切れた父は思わず紀子をぶってしまう。「父さんなんかなによ、親らしいことはなんにもしないくせに!」「生活力のない親は親じゃないって言うのか…」藤原鎌足の呟きが重い…。楽しいはずの鶏鍋は暗澹たる空気の中で終わる…。

 そして場面転換。次の場面では長男の嫁、白川由美が卵をふんだんに使ってホットケーキを焼く準備をしているのだ!!たった一個の卵をめぐって紛糾した赤木家に対して連続して三個も卵をボールに割り入れている白川由美…。この卵を使ったエピソードつなぎには参ってしまった。

 キャラクター的に一番興味深いのは、やはり白川由美である。天涯孤独のバーのホステスから妻の座を得て、やっと手に入れた人並みの生活を絶対に手放したくないという役どころ。宝田明から打診された実家への支援、そして実際に借金の申し込みにやってきた藤原鎌足と望月優子に頑としてお金を貸したくないと主張する一見鬼のような嫁なのである。しかし冷静に考えてみれば結婚するとき反対され、誰も「あたしたちの生活を壊さないでください」というこの白川由美を否定できはしまい。

 妹の紀子には、ボイラーマンの恋人がいたのだが、宝田明の薦めもあり秘書課に移った紀子は、先年に妻をなくした部長と付き合うようになり、ついにプロポーズされる。諦めきれないボイラーマンはストーカー化する。冒頭で松山善三の脚本には欠陥があると書いたが、紀子に悲劇が訪れる。松山善三の脚本はいつもこうなのだ。「名もなく貧しく美しく」でも「乱れる」でも同じことをしている。オイラが松山善三脚本と意識した三本でこういう主要登場人物の死があるというのはどうなんだろう?個人的に物語を展開させる上で安易に登場人物を殺すのはよくないことだと考えている。実に素晴らし出来の作品で全編を通して家族の絆とは?仕事とは?生活とは?ということを考えさせてくれる大傑作だと思うのだが、一点ここだけは画竜点睛を欠く気がしてならない。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 悲しい
  • 絶望的
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