ニセモノだけの世界で
- 文字読み さん
- 2010年11月5日 21時15分
- 閲覧数 375
- 役立ち度 2
- 総合評価
1961年。池広一夫監督。親の仇を打とうと放浪している侍(市川雷蔵)はようやく手がかりを見つけてヤクザの組に入り込む。するとそこには長年会っていなかった弟(橋幸夫)がいて、、、という話。時代劇なのに思いっきり現代的にしたコメディ。潮来笠の橋幸夫が劇中で歌い、雷蔵と組長の娘である水谷良重の祝言では結婚行進曲が流れたりする。しかし、そんなことよりすばらしいのは、徹底した「ニセモノ」へのこだわりです。
ヤクザのなかでは先輩である弟が義理の兄になり、水谷とはニセの夫婦となり、仇と狙っていた男は別人で、世話になった親分が実は仇だった。いくつもの「ニセモノ」が描かれるのですが、劇中でその「ニセモノ」たちの間に本当の感情が流れ出す。兄弟は心を通わせるし、ニセ夫婦はお互いに気持ちを確認する。そして仇とは実は親の頼みを聞いてくれた親友だったことがわかってくる。嘘からでたマコト。コミカルでいかにも俗受けを狙った表層の、この充実感。
ニセの兄弟、ニセの夫婦、ニセの仇が描かれつつ、人々の接触は極力禁欲されています。恋人はキスを邪魔され、かたき討ちはなくなり、夫婦は別々に寝る。そのなかで兄弟だけが肩を組みあい、最後では握手をかわす。男の兄弟の世界というわかりやすすぎるホモソーシャルな映画です。
詳細評価
イメージワード
- 未登録
このレビューは役に立ちましたか?