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タッカー

タッカー

TUCKER/TUCKER: THE MAN AND HIS DREAM

111

hal********

5.0

クルマ好きなんだ!

DVD化されていないのが不思議な佳作。フランシス・コッポラとジョージ・ルーカスというちょっと意外な組合せの二人が製作した、ある幻の自動車メーカーのお話。 本作の主人公であるプレストン・タッカー氏は実在の人物で、アメリカで軍需工場の経営をしていたが、新時代の自動車を作り出すべく、自動車工場への転身を図り、画期的な自動車”タッカー・トーピード”を設計する。 ところが、アメリカ自動社会の巨人達の謀略によってタッカー氏は詐欺の罪で”できもしない自動車をでっち上げて資金を調達した”ことによって法廷に立つことになる。 タッカー氏はトーピードが本当に量産可能であることを証明するために、期日までに50台生産しなければいけないため、家族や仲間達と必死になって自動車を製造することになる。自分達の可能性を示すために。 余談だけど、劇中に出てくるトーピードは全部本物。この映画の為に集結したらしい。更にはコッポラとルーカスもこのクルマのオーナーらしい。 このタッカー・トーピードというクルマ、実に革新的で今の我々には馴染みの深い技術が満載だ。例えばシートベルトとかディスク・ブレーキとか。 シートベルトは量産車輌に搭載されるようになったのはトーピードの発表から更に9年を待たなければいけなかった。それぐらい画期的なものを、一町工場のおっちゃんが造っちゃったもんだからビッグ・スリーも潰しにかかった、というわけ。 それと、この車輌は徹底的に乗員の安全を考えた造りになっている、というのもミソ。 先に述べた2つの技術もそうだけど、その他にもクラッシャブル・ゾーン(衝突時に潰れることで衝撃を緩和するボディ構造)とか、助手席の乗員保護構造とか。今の自動車技術にも使われている技術を、タッカー氏は60年以上も前に考えてた。 思うに、この映画は決してにっくき巨大勢力に立ち向かう一人の天才技術者を描きたかったわけじゃない、と思う。 結果的にビッグ・スリーに潰されることになっちゃったけど、一人のクルマが大好きなおじさんが、自分の溢れるアイデアを惜しげもなく注ぎ込んだ名車を、家族や仲間達と造り上げた、そんな話だと思う。 私はクルマが大好きだけど、”ああ、きっとクルマが好きな人が造ったんだろうな~”と思うクルマに出会わなくなった。 時代も複雑になって、そんな牧歌的なことを言っていられない世の中なのも分かるけど、やっぱり根底にタッカー氏とか、本田宗一郎氏とか、長谷川龍雄氏(社長じゃないけど)のような自動車好きが居てこそだと思う。 だって、クルマを単なる消耗品として売りまくった末にビッグ・スリーの中の二社も没落しちゃった気がするし。 今、この映画を観るとよく分かる。未来を見据えたクルマって魅力的なんだってこと、クルマ好きだから素敵なクルマができるんだってこと。この点は、日本のメーカーさんもよく観て欲しいな。 最後に、家族や仲間と一生懸命何かを造ることの大切さ。これも今の時代には必要かもね。

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