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座頭市物語

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4.0

生まれたての座頭市が居る

この後半世紀にわたる作品群のスタートを目撃できる、映画作りの教科書のような作品。 このレビューをご覧になるコアな皆様は既にご存知でしょう、子母澤寛が古老から聞いた話を、ほんの短い作品にしたものが原作。中央公論社から原作が復刻版で出版されたらしいが、今はどうも手に入らないらしい。 その、きわめて短いお話をベースに、その後半世紀もシリーズ作品・関連作品が作成されるという、壮大なヒット作づくりの端緒が見てとれる、貴重な作品と言えます。 原作が短いため、市の人間像をどう創るか、脚本、役作り、殺陣など、かなりの試行錯誤が感じられます。周辺人物は個性的に描かれますが、市以外の周辺を極めてシンプルにすることで、市とはどんな人間なのかを浮き上がらせることに成功しているようです。エロもなくアクションも適度に抑え、筋立てもシンプルで、ドラマ作りの基本の「枷」を巧みに利用していて、とても判り易くできています。 この作品の市は、後世にイメージされる市像とは少しちがうように思えます。ひねくれ物で、恥ずかしがり屋で、それでいて威張りたくて・・・かなり人間臭い市です。 この後この人間像をベースにデフォルメされていくのでしょう。その変遷もこれらの作品を観る楽しみかもしれません。 最後、「えっ?」というような展開で、どうしても次作が観たくなる、原作に忠実にしたために、意図せぬ観客の反応を呼び起こしたのではないでしょうか。それが、何かは、御覧になってからのお楽しみ。 三隅監督によるやや上品な仕上がりで、アクション・エンターティメントを期待されるかたには、少しがっかりか。映画好きな高校生のおられるご家庭ではおじいちゃんの昔話を交えながら、ご一緒に御覧になることをお奨めします。 それと、飯岡の親分はどうにも「ブラック企業」の社長に見えてなりません。

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