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女の一生

oju********

4.0

ネタバレ

 明治時代の商家に奉公人として拾われたおけい(京マチコ)の一生を明治・大正・昭和と第2次大戦などの激動の時代背景とともに描いた映画です。  商家(堤家)の次男で奉公するきっかけを作った田宮二郎と京マチコは惹かれあいます。しかし、長男が京マチコにほれてしまいその母親から「長男と堤家を守って欲しい」と懇願され、承諾するところから京マチコの人生が何かズレ始めます。  愛のない結婚に意味を持たせるためなのか堤家を大きくすることに京マチコの人生のベクトルは傾き、その結果、夫や娘、親戚の心も自分から離れてしまいます。そこへ何十年ぶりに田宮二郎がふらりと帰ってきますが、治安維持法下の日本では御尋ね者になってしまっているため、堤家のためにおけいはかつて愛した人を警察に突き出してしまいます。そうまでして大きくした商売も戦争の煽りを受けてついに倒産、そこに東京大空襲、そして敗戦、、、すべて失ったおけいは屋敷跡の荒地で穴の中で生活を。そこに、「アカ」と逮捕された田宮二郎が釈放されて名士になりおけいを迎えに現れます。  「おけいさん、まだ僕のことが好きですか?なら、一緒にいこう!これから僕があなたを幸せにして見せますよ。」  このときのおけいにとって、まぶしすぎる言葉であったに違いありません。ふらふらと穴から出て田宮二郎と歩き出すおけい。しかし、屋敷跡の小さな「門」の前で立ち止まります。最初、田宮二郎に呼ばれて奉公人になるときにくぐり、そして罪人として突き出したときに田宮二郎をくぐらせた「門」、、、  その門を前におけいは立ち止まり、共に行くことを拒絶します。疎開している堤家の皆が帰るまでには小屋の一つも作っておきたいといって… 田宮二郎は寂しそうな笑顔で「俺の所に来たければいつでもおいで。さようなら」と言って立ち去ります。今どこにいるか告げてないはずなのに… 立ち去る田宮二郎を見送った後、穴に向かってフラフラと歩き出し、闇の中で歌を口ずさみ石の上に一人座るおけいで終わりです。  今まで歩んできた自分の道。最後の誘いにどれだけ飛びつきたかったことでしょうか。しかし、今までの人生で背負ってきた業を無かったここにはできない。自分の人生を否定することはできない。「意地」と言えばいいんでしょうか。そして、搾り出されるような声で歌いだされる最後の歌。切ないという言葉では表現しきれないような感情がわきあがってきます。  邦画って素敵ですね。

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