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丘は花ざかり (1963)

監督
堀池清
  • みたいムービー 1
  • みたログ 7

2.67 / 評価:3件

日本人の倫理観

  • nqb***** さん
  • 2017年5月20日 7時44分
  • 閲覧数 155
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

浅丘ルリ子この時23歳。一番綺麗な時です。古い作品を観ると面白いことがたくさんあります。例えば今でこそ分煙の意識が高く、レストランでは全面禁煙を推進しようという動きが活発だったりしますけど、昔の日本の映画はもう誰も彼もいつでもどこでもみんなタバコを吸っています。この映画でも今ではありえないってところで吸っていました。主人公香山美和子(浅丘ルリ子)が女友達を見舞う場面。この女友達が病室のベッドの上で堂々とタバコを吸ってます。これは驚きました!それに着ているのがどうみてもネグリジェ。バイクもノーヘルでOKだし、飲酒運転なんて当たり前(笑)昔はいろんなことが緩かったんだなぁ~ってことがよくわかります!大卒女子の給料が手取りで13063円って言ってる!

 でもいちばんこの映画を観て凄い!と感じたのが当時の日本人の倫理観です。明らかに昭和30年代と40年代では日本人の倫理観そのものが大きく変化している。香山美和子は出版社に勤務する新人OL。この頃はビジネスガール(BG)って言ってました。若い社員・野崎(川地民夫)からアプローチを受けるが、編集長・野呂(二谷英明)の持つ中年の渋い魅力に次第に惹かれていくというお話。野呂編集長は、美和子を連れて作家に原稿依頼に行った帰りにちょっと寄っていかないかと自宅に美和子を誘う。もうなんか下心見え見えな気がしたな(笑)野呂は去年に妻と死別して小学生くらいの男の子と女の子を抱えてやもめ暮らし。仕事に行ってる間は野呂の母親が二人の面倒を見ている。すぐに二人の子供とも母親とも打ち解ける美和子。途中美和子のうなじに見とれる野呂目線のショットが入る。(笑)

 野呂が大阪に出張しているある日、野呂の小学生の娘から出版社の美和子に「寂しいから泊まりに来てほしい」と電話が入る。姉にたしなめられるが嬉々として出かけていく美和子。子供たちに食事を作ってあげたりお風呂に入れてあげたりしてさらにスキンシップを計る。夜は花火してスイカを食べて幸せな疑似家族を味わう。
 夜遅くに大阪の野呂から電話が入る。電話を代わった美和子は「いまいるお部屋の様子聞かせて。簡潔にリアリズムでね」リクエストに応えて実況を始める野呂。それを受けて美和子が続ける。「その男は東京の実家に電話をかけている。その相手は若い女性で頭の働きがよく、その上美人なので彼は大変可愛がっているのだ」「くだらない。切るよ」「あら、ひどいわ」「お休み」「おやすみなさい…」どうです。これ。超ラブラブモードでしょう?

 ところが後日、玉堂美術館に行った帰りにあたしの家によって欲しいというと野呂からは僕に今縁談があると告げられショックを受ける美和子。会社のオールドミスの女性と飲んだりして意を決して、深夜野呂の家を訪ねます。「アタシは野呂さんが好き!」と告白します。ここからの展開がすごいデス!野呂は美和子をヤドカリだというのです。「きみはこのまま僕の家庭に入って穏やかな暮らしを続けたいと思ってるんだろうが、今のこの家庭を作り出したのはもっぱら死んだ家内の努力によるものだ」とか言い出すんですよ。オイラはもう口あんぐりですよ~。何言ってんだこいつってなものです。さらに続けて「ずるい意気地なしの怠け者のヤドカリだ!」とまで言い切ります。要は野崎のような若い人と一緒になれと諭すわけです。若い人は若い人同志、喜びや苦しみをともにしながら成長していくのが一番いいんだというわけです。
 
 これに対して美和子はあなたは私のことを愛してないからそんなことを言うんだと反論します。野呂は言います。いい加減な気持ちなら君と結婚してその若さを貪りくらうだろうと言います。本当に愛しているから結婚しないだっていうわけです。これは凄いですね、当時の日本人の倫理観の高さを示していると思います。この映画が成立しているんですよ。現在では考えられないでしょう。若くて綺麗な女性から愛の告白されたら、そして自分もやもめで結婚の障害はなにひとつないのに、若い人は若い人とくっつけ、そして自分で血を流して自分たちの城を築けというのはなんと高潔なんだろうと思いました。不倫がもはや当たり前になってしまっている現代においては逆にものすごく新鮮に感じます。先日も40歳の中学教師が教え子の中3女子と不適切な関係になり懲戒免職されるという事件がありました。その教師にこの映画の二谷英明のセリフを聞かせてやりたいくらいです。というかこれは原作の石坂洋次郎の倫理観なのかな~。あれだけもてはやされていた石坂洋次郎原作が昭和40年代に入るとさっぱりきっぱり遺棄されたというのは時代が変わったからにほかなりません。これだけいろんなことがあるとこの時代の倫理観がちょっぴり羨ましく感じることがあります。日本人にとって清く正しく美しく…は遠い過去になってしまったのかもしれませんね…。

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