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香華 前後篇

bakeneko

5.0

ネタバレ女は3界に家なし

有吉佐和子の原作を木下監督が岡田茉莉子さんの結婚祝いに演出した渾身の作品で、本作での予算&製作期間の規定オーバーによって、木下監督が松竹を追われることになった映画でもあります(この時期の松竹は小津安二郎監督の葬式で香典を掻っ攫おうとする等、予算的に追い詰められていた様です)。 黒澤は“男”を、木下は“女”の本質を描き出す―と言われた様に、本作は女性の感情の強さ、一途さ、生命力、艶やかさ..活写して、鮮やかな映画になっています。 日露戦争→1962年(現代)までの、女の“生きて行くこと&愛情への奮闘”を歴史的な出来事を盛り込んで、様々な流転でドラマチックに展開する大河ドラマであります。そして、享楽的で奔放な母親:乙羽信子と生真面目で堅実な娘:岡田茉莉子が花柳界&旅館で生き抜いていく様を、抜群の感情把握&心理描写で魅せてくれます。 この対照的な2種類の“女”を深い人間洞察で掴みきっているところが絶妙で、天真爛漫な“女の情”を体現する乙羽の演じる母親像は、“生きた女”を見せてくれますし、岡田茉莉子さんは、誠実で忍耐強い娘を18から60歳以上までを力演して“真摯な女性のまごころ”の美しさで泣かせてくれます。ゲスト的な出演ながら貫録の熱演を魅せる:田中絹代と、実在感で唸らせる杉村春子に加えて、加藤剛、奈良岡朋子らも顔を見せていますが、三木のり平の朴訥な役どころが、物語に飄々としたユーモアをもたらしています。 楠田浩之のカメラで捉えた自然光の美しさとモブシーンは素晴らしく、和歌山&静岡&東京のそれぞれの場景が捉えられていますし、様々な髪形や着物で“花柳界の仕来たり”を知ることもできます。そして、和楽ファンには三味線の音&舞の見事さも眼福であります。 名人の演出&演技&映像&音楽で、大河&人間ドラマの面白さを満喫させてくれる作品で、描き出される“生の女”の深さと美しさに唸らされる名作であります。 脱線? この母娘の様に、世の中には2種類のタイプの人間がいます。 飲み会の人種模様に例えると、 鯨飲して暴れたり介抱される等―世話を掛ける“困ったひとタイプ”と、 会を仕切ったり介抱したりする等―世話をする“苦労性タイプ“であります で、前者の方が愉しい&後者は損をしている様ですが、後者は決して前者にはなれない&結構やりがいを感じているのであります(私は後者のタイプ)。

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