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香華 前後篇

mar********

5.0

ネタバレ母と娘2人の60年に及ぶ愛憎劇

この映画に登場するのは、美しいが自由奔放で自分勝手で誰かに寄生しながらしか生きて行けない母親と、実母から愛情を注がれた事も余り無いまま、まだ10歳という幼い時にその母親から芸者に売られながらも、どうしてもそんな母を見捨てられない娘との60年にも及ぶ愛憎劇であります。 こんな母親だから、娘は当然苦労のし通しです。 一世一代の恋愛も、母親の身持ちの悪さが原因で破局してしまいます。 母親は3度も結婚しているのに、娘は芸者という身分の為にいつも日陰の身に甘んじさせられます。 しかし、しかしです。この娘は、この母を憎みなからも、結局面倒を見ます。 これは、単に娘が優しくて几帳面で真面目な性格の持ち主だからではないようです。 何度裏切られても、やはり心の底では、この母親を愛していたし、また最後まで母から愛されたいと自分でも渇望していたのではと思えます。 「お母さん、あなたは最後にきちんと帳尻を合わせて行った」という台詞に、その思いが詰まっていたのではないでしょうか。 また、この映画の中では「あなた、私にヤキモチ焼いてるんじゃないの?」という母親の台詞が2度出て来るのですが(最初は母親がその母親に対して言い、次に母親が娘に対して言う)、これは当に図星だったのではないでしょうか? こんなに無責任に何にも縛られずに、身を落としても女として生きる事を難なく選択出来る女への嫉妬心があるからこそ、言われた方は呆れながらも2の句が継げずに押し黙ってしまったのでしょう。母娘であっても、女同士の対抗意識には凄まじいものがある事も事実ですから。 更に、最後の「寄せる波はあっても、返す波は無い」という言葉に、この娘の一生が集約されている様な気がしました。 でも、一見損ばかりしている様に見える娘ですが、彼女はあの母親の反面教師のお陰で、あの当時の女性には珍しい経済的な自立と周りからの信頼を得る事が出来たとも言えるのではないかと思います。 娘役の岡田茉莉子、母親役の乙羽信子、祖母役の田中絹代、それぞれに素晴らしかったと思います。

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