レビュー一覧に戻る
風と樹と空と

kih********

4.0

あれから50年、懐かし、ほろ苦、青春時代

 この映画だったのか、と大いに驚いた。念のために制作年を調べると、昭和39年。間違いない。あの時日比谷公園で撮影していた映画だ。  この映画で、東北から東京に就職した若者が日比谷公園に集う場面がある。私はこの年、九州から上京して、日比谷の会社で仕事をしていた。その建物がこの公園の正面にある。東京にも会社にもなかなか馴染めず、よくこの公園に逃げ出していた。その時に、このロケに出くわした。  この年は東京オリンピック開催とあって、公園は一段と整美されていた。都心の一等地に広大な面積を有するこの公園には有名な日比谷公会堂がある(この映画にも大きく映る)。野外音楽堂もある(これは映らない)。噴水の傍にお洒落なミニ音楽堂?もある(これは映る)。そんなことで日比谷公園は映画に限らず、様々な有名人が出入りする所だった。思いもかけないスターに出会うことが、度々あった。これが東京なのだと灌漑深かった。  そんな中でも、吉永小百合は格別だった。“サユリスト”あこがれのサユリ姫が映画におさまっているところではないか。仕事を抜けて来ているのも忘れて見とれた。その時の映画がこれ。そう、確か、こうやって走って公園を去っていく。見たとおりが映画の画面になっている。  私の場合は1年経たないうちに九州に戻った。オリンピックが終了して、冬になって、スモッグで息苦しくなって、人の波に追いつけなくて、知力・気力・体力ともに東京には住めなくなった。  映画の小百合さんや浜田くんたちは、うちとは全く逆の東北からの上京だった。その後いかがお過ごしだろうか。震災の影響はどうだったろうか。同じ歳で、同じ境遇を(ほんの一時期ではあるけど)共有していた、いってみれば同期生だ。  偶然に出会ったロケ現場だった。あれからかれこれ50年経って、これまた偶然に手にしたDVDだった。あの一年の東京・日比谷などなど思い出して、懐かしいこと懐かしいこと。私にはほろ苦い青春だった。

閲覧数811