ここから本文です

アリス (1988)

ALICE

監督
ヤン・シュヴァンクマイエル
  • みたいムービー 136
  • みたログ 511

3.92 / 評価:130件

みぞおちのあたりで蠢く

  • あげまき さん
  • 2008年1月22日 17時11分
  • 閲覧数 585
  • 役立ち度 20
    • 総合評価
    • ★★★★★

おなじみ『不思議の国のアリス』のお話ですが、
オープニングで「不思議の国のアリスにインスパイアされた」
とクレジットされているように、すこし意味が違います。

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』は、
記号、暗号、アナグラム、タテ読み、ダジャレ、比喩、暗喩など
ありとあらゆる言葉あそびを駆使したある意味「ことば」の物語。

対して、シュヴァンクマイエルの『アリス』は
あらゆるイメージと音を駆使しダイレクトに感じさせる「感覚」の物語。

  ・おがくずを喰らって内臓を継ぎ足す剥製の白ウサギ
  ・ホルマリン漬けの「なにか」
  ・指ですくったジャム(状のもの)に混じっている画鋲
  ・青いインクを飲むアリス(なんでも口にしなさんな ^_^; )
  ・ひきだしいっぱいに詰まった不吉な裁ちバサミ
  ・うすぎたないウサギの家
  ・太い舌(牛タンなみ)でハエをむさぼる蛙の召使い

「グロテスク」

しかしベースには、簡単な日本語で表すことが出来るものが敷かれている。

「気持ち悪い」

それに該当するのは、形ではなく、状況である。

  ・入れると思って開けた場所に入れなかった。
  ・呼んでも応えてもらえない。
  ・(そこにあるのに)カギがない。
  ・(そこに見えるのに)行けない。
  ・子供の泣き声がどこからか聞こえる。
  ・ワケの分からないものに追いかけられる。
  ・自分にはやりたいことがあるのに、別の用事を言いつけられる。

たぶん、多くの人が「思い通りにいかない状況」の夢を見たことがあると思う。
シチュエーションの違いはありこそすれ、この気持ち悪さの正体は、
かつて見てきた悪夢の内容、もしくは体験した嫌な記憶が、
みぞおちのあたりで蠢く感じに違いない。


グロテスクに隠された悪夢の記憶。
シュヴァンクマイエルうまい、憎いよ。

オソロしいのは、要所要所で「ト書き」を語る、アリスの唇だ。
繰り返される、少女の唇の、どアップ。
一種、怪しいエロスさえ感じさせるような、
幼い歯並び。子供の滑舌。きれいなピンクの唇。
  (カメラが引いたら、ウサギの剥製と同じ目をしてたりしてね。ありそうだ。)
物語をぶった切るこのト書きに、一瞬現実に戻るのだが、夢が夢であることが際立つ。
おしるこに添えられた塩コンブみたいで、いいね。もう少し量は少ない方が好みだけど。


シュヴァンクマイエルのアリス、決して万人向けではありません。
キャロルの『不思議の国のアリス』はファンシー文具のような物語ではなく
ナンセンスで、解りにくいシャレばっかりで、
意地が悪くて(泣いてるガキはひっぱたけ!! みたいな)
読めば読む程、うんざりさせられて、
そして、トリコになって、のめり込む罠のような話です。
もともとがそういう話なので、
ディズニーのアリスのイメージが強い方は要注意。
(でも、見てみてよ。嫌ってもいいから。)


キャロルのアリスが好きな方は、お気に入りのキャラが
どんな姿で現れるのか、期待してください。
私の好きなチェシャ猫や、まがい海亀は出てきませんが、
イモムシが思いもよらない出現の仕方をしてびっくり、拍手。


*******
さて
帽子屋がアリスに出したなぞなぞ。
「大ガラスは何故書き物机に似ているのか?」
(Why Is a Raven Like a Writing-Desk?)
映画では、アリスは答える暇も与えられませんでした。
答えが知りたい方は問いの原文を検索してみてください。
(日本語版Wikipedia『不思議の国のアリス』項目にも載っています。)
世界中のキャロリアンがひねりだした、愛しい答え。
解ったような解らないような、ナンセンスな答えですが、
これがルイス・キャロル流。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 笑える
  • 楽しい
  • ファンタジー
  • 不思議
  • 不気味
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ