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五瓣の椿 (1964)

監督
野村芳太郎
  • みたいムービー 5
  • みたログ 45

3.87 / 評価:15件

椿は三十郎だけではない

  • sa2******** さん
  • 2009年11月11日 20時09分
  • 閲覧数 1352
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

 原作 山本周五郎     監督 野村芳太郎  脚本 井出雅人

原作は山本周五郎になっているが、1940年に発表されたコーネル・ウールリッチ名義「黒衣の花嫁」(ウイリアムアイリッシュ)が原案である。
1959年に連載され、1964年に映画化された。
設定を江戸時代に移すなど大幅に換骨奪胎されていて、若い女性が近親の復讐で男を次々殺す、という共通点しか見つからない。
この程度でも現在では問題視されるケースもあるだろうが、戦後すぐの頃では、山本周五郎の幅広い読書力を賞賛すべきだろう。
黒衣の花嫁同様ミステリーである。当時としては復讐ものはまだ珍しく結末も至当なもので、当時から現在に至るまで人気がある。
演劇・TV・映画で1964年から2005年までに17回も公開されている。
TVでは2001年NHN金曜時代劇で国仲涼子主演5回シリーズが放送された。

復讐というのは人間の本能にも似た感情なので、爽快感を求める娯楽作品以外では扱いが難しい。どうしても復讐者=悪となる。何故復讐が悪なのか。その答の一例がこの映画のラストにある。
加藤剛演じる奉行にラストで岩下志麻が語るセリフが実に的確に事の本質を衝いていると思う。
こうしたヒューマンな教示がこの作品の底辺にある為いつまでも安定した人気があるのだろう。
そしてその内容は山本周五郎の長編小説には度々登場し繰り返し語られる。いわば周五郎作品の主題の一つでもある。

しかしこの映画の最大の魅力は岩下志麻姐さんだろう。この頃23歳、すでに木下恵介、小津安二郎、小林正樹作品に出演している松竹の看板女優だ。本作までは清純派の清楚で生真面目な役が多く、同年公開の「道場破り」では妻役であったもののまだ生硬さがあり、夫婦の情感が上手く演じられていなかったような気がした。(相手役が長門勇のせいか?)
本作は163分の総天然色映画でそのほとんどのシーンに志麻姐さんは登場していて様々な種類の表情を見る事ができる。

男を誑し込んで寝間で簪を武器に刺し殺すのが手口なのだが、直接の濡れ場は無いものの妖艶な表情を見せることもある。潔癖で一途な思いを吐露する場面もあり、硬い蕾が徐々に膨らみをもって柔らかくなり、華麗に開花する風情を感じさせる。

殺され役も小沢昭一や西村晃、伊藤雄之助は当然としても二枚目役が多い田村高廣が最初に殺されるのも面白い趣向だ。
周五郎作品には時々とんでもなく淫蕩な女が描かれる事があるが映画に登場するのはこの作品だけかと思う。
その淫蕩な女を左幸子がお歯黒を付けながら熱演しているが、志麻姐さんの実の母親役というのは実年齢的にかわいそうな気がした。市原悦子も今と変わらないセリフ回しで登場している。

連続殺人犯が意味ありげな証拠品を残すという設定は数多くあり、本作では椿がそれにあたるのだが、犯人しかその意味が判らないというのは現在では物足りない。小説の時点から50年経過してればやむをえないだろう。
ミステリーとしては賞味期限が過ぎているかもしれないが、復讐譚ドラマとしては今でも充分面白い。
安定したストーリー展開と納得できる結末、志麻姐さんの魅力満載で飽きずに見られる。

明日にでも復讐で男を殺す予定があり、今晩映画を見る時間のある女性は必見だ。身に覚えのある男性は予防のためにも観ておくのがいいだろう。

詳細評価

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