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上意討ち 拝領妻始末 (1967)

監督
小林正樹
  • みたいムービー 23
  • みたログ 170

3.93 / 評価:81件

あえて言う、私は愚図な人間だ

  • kor***** さん
  • 2014年3月18日 8時54分
  • 閲覧数 861
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

小林正樹監督作品。小説家滝口康彦の『拝領妻始末』を原作とした時代劇。滝口の代表作である『異聞浪人記』は、本作にも出演している仲代達也を主演に据え、邦画史上屈指の時代劇『切腹』として1962年に公開されている。(不本意ながら『切腹』よりも先に、2011年のリメイク作『一命』を観賞してしまった私)江戸時代に実在した会津藩主松平正容とその側室本妙院の実話がベースにされており、そこに封建制においての「『士道』の峻烈さ、酷薄さ、無残さ」をうまく加え、創作していると思う。

ストーリーは『切腹』同様に理不尽な仕打ちに対する憤りが一種のカタルシスとして放出されていくものだが、男社会の中で女の執念が光る点がポイントである。主君の命令はどんな事であろうと絶対服従。自己主張などもってのほかの封建武家社会の理不尽さ、残酷さに苦しむ主人公一家への感情移入がスムーズにいけば作品にのめり込めるし、ラストにはニューシネマのような哀愁に満ちた独特な余韻にも浸れる。

しかし、司葉子の迫真の演技よりも、10代の役に違和感を感じたり(公開時33歳)いくらなんでも会津から江戸まで歩くのはきついだろ、など理不尽な仕打ちではない部分に気が散ってはダメだ(笑)

三船敏郎らしいラストの殺陣シーンや、白黒の映像で無駄を一切殺ぎ落とした点には単なる決闘ものとは一線を画した出来を感じた。役者の表情へと急接近するカメラワークといい、緊迫感が堪らない。亥の子祭り(別名「女の子祭り」。亥(猪)は子を沢山産むことから「子孫繁栄の神」ともされていた)の太鼓の音が死へのカウントダウンのように悲しげに響くも、子孫繁栄に重きを置いていた時代の尊さと儚さを感じさせてくれる。

そして三船敏郎の台詞である「あえて言う、私は愚図な人間だ」が印象深い。足音だけで人数のみならず、人物までも特定出来る凄腕の持ち主であろうと戦国時代と違って、太平の世では馬廻り役三百石の身分を保つ事が精一杯。どんなに研いだ刀も切る対象がなければ価値は半減してしまうかもしれない。しかし、枯れていく自分の人生に一筋の「生き甲斐」を見つけ、頑ななまでに守り続けようとする一太刀には鋭さよりも重みがあった。

上司に頭を下げる身。妻や姑に頭が上がらない身。行き場のないストレスを溜め、肩身の狭い思いをしている人間は現代にも多く存在する。ぜひ観賞してみてはどうだろう?

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