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乱れ雲 (1967)

監督
成瀬巳喜男
  • みたいムービー 8
  • みたログ 111

3.76 / 評価:34件

そんな笑顔見せないでよ

  • kor***** さん
  • 2014年6月12日 17時11分
  • 閲覧数 884
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

不幸な出来事から始まる悲哀系のストーリーであるが、偶発的な出会いの多さが携帯電話も存在しない昭和で起きる若干体のいい展開にもなっている。幸福の絶頂からどん底へと突き落とされ、女は婚約者を失い、男は婚約の予定と将来の出世を手放すことになる。再婚や籍を抜けると遺族年金がもらえなくなるシビアな法律や、接待としてコールガールを車内にに乗せていたダークな事実など、大人の事情が絡んでいく展開はけっして子供には理解しにくいとは思う。ただし、成瀬巳喜男監督らしく悲劇の中でも、かすかな光が差し込むように救いのある人生へと導いてくれている。武満徹のメロドラマな曲調も映像と抜群に合わさり、加山雄三が全身で母性本能をくすぐる役柄に仕上げているのがなによりニクイ。

八方塞の中、二人の行き着く先が自然豊かな津軽(青森)であり、セットでは出せない閉鎖感をロケーションでうまくスクリーンに収めている(青森の方ごめんなさい)。車のカットでは前半の「葬式に行くシーン」と後半の「汽車に向かうシーン」とで“あえて”同じアングルで撮り、それは同時に不吉な未来を意味している。森光子夫妻も、心中未遂のカップルも全てが暗示の対象となっているのだが、男はポジティブな視線でしか未来を描けない。思い出と欲望の中で苦しみ、戸惑う女を司葉子が迫真の芝居で演じ、後ろから抱きしめたくなる程に繊細な女性の気持ちを表現している。

過去という名の“乗り越えなければいけない壁”を高く感じる点は、キャラクターの設定は違えど、同じく結ばれずに終わる『マディソン郡の橋』を思い出してしまった。こぼれてしまったコーヒーを変えるさりげない優しさや、悲しさを振り払ってくれるほどの加山雄三の笑顔は見ているだけで辛くもなる。世界で一番憎い人であり、許せない人との関係はきっと人生にとって夕立のように激しくも、終わった後は雨の匂いが強く残る印象的な出会いなのかもしれない。本作が遺作となる成瀬監督の作品はどれも、観終わった後にそのような余韻が残るものばかりである。


余談

・左ト全をチョイ役で出されると、どうしても若大将シリーズと重なってしまう。そしてやはり加山雄三は歌います。

・携帯電話のない時代の偶然って「やらせ」と疑うくらい凄い確率だと感じる今日この頃。

詳細評価

物語
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