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惚れた強み

bakeneko

5.0

ネタバレしがねぇ恋の情けが仇

通称『切られ与三』(=『お富与三郎』(おとみよさぶろう)または『源氏店』(げんやだな)として有名な歌舞伎の“与話情浮名横櫛”から登場人物名や設定を採りながらも、現代的な選挙戦批判や女の自立も盛り込んだ喜悲劇で、森崎東の脚本らしい―主演女優のバイタリティに拍手する作品となっています。 千葉県の漁村の村長に再選を計る与三郎とその妾のトミ子の手切れ&赤ちゃん認知騒動を、村長選挙と絡めて描いた“選挙狂想曲+女の生活力賛歌”映画で、頼りない村長を有島一郎が珍しく眼鏡を外して力演しています。 何と言っても生きの良いヒロイン:佐藤友美の気っ風の良さが見所で、右往左往する男達を尻目にどんな手段でも生活していける女の強さを魅せてくれます。 一方で、男達の悲惨さや頼りなさが笑えるレベルを超えて深刻すぎる作劇が減点要素となっていて、有島の“耐える境遇”や闖入する藤田まことの悪辣さは後味の悪さを残してしまっています。 一小村の選挙を通して、(全てが体勢=大政党の安定当選へと結びつく)日本の選挙地盤も風刺している作品ですが、人口に膾炙した歌舞伎名作を原型が分からないほど換骨奪胎した怪作として、原典の登場キャラクターの現代的?変更を愉しむのも一興かと思います。 ねたばれ? 養子の松夫はやはり原作歌舞伎から“海松杭の松”に由来します(お富を追い詰める悪役です)。

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