恐怖の博覧会(笑い)
- bakeneko さん
- 2010年5月5日 23時42分
- 閲覧数 636
- 役立ち度 9
- 総合評価
野坂昭如のブラックユーモアに満ちた風刺小説を、藤本義一が脚色して三隅研次が監督した、個人の死から戦争→人類の滅亡までをシニカルな笑いで包んだ怪作であります。
葬式稼業の近代化と新方式のアイディア発案から始まって、どんどんエスカレートする死に纏わる企業の発展を通して、人間と社会の本質を“黒い笑い”で見せてくれる狂想曲的喜劇で、主演の勝新太郎のエキセントリックな熱演に加えて、伊藤雄之助、藤村有弘、藤岡琢也、財津一郎らの怪演に驚愕する作品でもあります。
また、撮影の宮川一夫の怖い絵、音楽の鏑木創の独創的な曲、美術の内藤昭の“とんでもない”博覧会のセットにも唸らされる映画で、破天荒な中にちょっと印隠滅滅とした大映カラーがよく出た作品ともいえます。
ちょうど大阪万博寸前の加速していく時代の雰囲気と、世界レベルでの社会不安、遠ざかりつつありながらも凶悪な記憶であった戦争などの混在した時代の空気を感じることもできる作品ですが、そのメッセージ性は現在でも全く古びていないものであります(困ったもんだ)。
ブラックで破壊的、風刺的な社会喜劇が好きな方にお勧めの奇妙な力作で、現代の優しい映画に慣れている人には刺激が強すぎるかもしれません。
ねたばれ?
劇中で語られる、当時では“風刺的=ありえない”アイディアだった葬式産業のシステムは現在では常識となっています(うーむ)。
詳細評価
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