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赤頭巾ちゃん気をつけて (1970)

監督
森谷司郎
  • みたいムービー 10
  • みたログ 53

3.26 / 評価:19件

逃走論の先駆的作品かな

  • daw******** さん
  • 2010年8月14日 20時50分
  • 閲覧数 894
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

昭和45年、東宝作品で庄司薫さんの芥川賞受賞作の
同名映画化です。前年、東大安田講堂事件を象徴とする
東大紛争のあおりを受けて東大入試中止という異常事態に
なってしまったのですが、そうした時代背景の中、
日比谷高校に通う、廻りから東大受験を嘱望された
一人の青年の、ちょっと冷めた青春日記という作風です。
常識的な大人の世界と若い世代の非日常的な快楽の世界の
どちらにもしっくりせずに、青春をさまよい歩く姿を乾いた
タッチで描いています。
主人公薫くん(岡田裕介)の「逃げて逃げて逃げまくる方法」
つまり周囲のどうでもいい問題からは逃げて、逃げて、逃げ
まくって、本当に重要な問題に遭遇した時のために
力を温存すべきだという生き方はこの後にやってくる
シラケ世代、更にはニューアカの代名詞のような存在で
あった「逃走論」を既に予測していたかのようで、先見性の
ある映画という見方もできますね。

主演の岡田裕介さんなんですが、ちょっと石坂浩二さん似で
クールな俳優さんでした。インテリや少し陰のある役柄を
演じるのが絶妙で他にも三億事件の犯人役やら、時代に
距離を置く復員兵役が印象に残っています。
俳優の他にプロデューサーとしても活躍していたんですが
ここんとこ、すっかり見かけなくなったなと思っていましたら
何と、何といつの間にか、東映の社長さんになられていました。
吃驚仰天とはこのこと。ちょっとふくよかになられて、それが
恰幅よく実に社長さんらしい。父上は東映を築き上げた大物
岡田茂さん。妹さんはコメンテーターの高木美也子さんです。
因みすぎて申し訳ないのですが相手役の由美を演じた
ボーイッシュでキュートな森和代さんは、期待の女優さん
だったんですが、この後、2,3作に出演して結婚、引退して
しまいました。旦那さんは森本レオさんです。

日比谷高校三年生の、薫くんは、東大入試は中止になるは、
ホンコン風邪をひいてしまうは、スキーにつまずいて
足の爪をはがしてしまうは、愛犬が死んでしまうはと全く
運がついていません。幼なじみでつき合っているような
いないような由美(森和代)とも口喧嘩ばかりして
うまくいかない。

知り合いの教育ママにつかまって
「やはり、大学は東大だわね。浪人するんでしょ」
「日比谷は灘に抜かれたんだって」と捲し立てられ、高校の
友人は学園紛争にのめりこんでしまうし、友人の小林くんは
この時代特有の青春の苦悩を告白します。
世の中のすべての重圧が薫くんに訪れてしまったようで。
薫くんは意味もなく銀座の街を彷徨うのですが、そこで
かわいい幼女に出会います。幼女は「赤頭巾ちゃん」の本を
買いにきたらしくて、書棚に沢山並べられてある
「赤頭巾ちゃん」の中から一番、面白そうな一冊を
選んであげます。
その時、薫くんは理解したのです。こんなかわいい子が、自由に
安心して遊べるように大きな森のような、海のような強い男に
なってやろうと。
薫くんの足は自然と由美の家に向いていました。

現在の喋りすぎで言葉が乱立気味の恋愛ドラマにはうんざり。
そんな方にもお勧めです。勿論、この時代の青春を追体験したい
人にも。また、原作も是非、読んでみてください。
三田誠広さんの「僕って何」同様青春の愛読書として永遠に
読み継がれていく作品です。
冒頭だけ、ちょっと紹介します。
軽快なタッチで、クールなようでいて、ニヒルなようでいて、
でも実は世界に交わりたい、その方法を模索する青年の心理を
描いています。気持ちのいい読後感が待ちかまえていますよ。

 ぼくは時々、世界中の電話という電話は、みんな母親という
女性たちのお膝の上かなんかにのっているのじゃないかと
思うことがある。特に女友達にかける時なんかがそうで、
どういうわけか、必ず「ママ」が出てくるのだ。もちろん
ぼくには(どなるわけじゃないが)やましいところはないし、
出てくる母親たちに悪気があるわけでもない。それどころか
彼女たちは、(キャラメルはくれないまでも)まるで巨大な
シャンパンのびんみたいに好意に溢れていて、まごまごして
いるとぼくを頭から泡だらけにしてしまうほどだ。
時に最近はいけない。例の東大入試が中止になって以来、
ぼくのような高校三年生というか旧東大受験生(?)という
やつは、「可哀そうだ」という点で一種の
ナショナル・コンセンサスを獲得したおもむきがある。
なにしろ安田トリデで奮戦した反代々木系の闘士たちまで、
「受験生諸君にはすまないと思うが」なんていうほど
なんだからこれは大変だ。
(庄司薫 「赤頭巾ちゃん気をつけて」より)

詳細評価

物語
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