小林桂樹の名演技・堀川弘通の名演出
- tam***** さん
- 2008年4月16日 1時12分
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- 総合評価
東宝の8・15シリーズはなんだか知らないが、中学生時分に封切りでよく見に行っていた。はじめは、「日本海大海戦」とか「山本五十六」とか、結構戦記もの風の戦中世代のレトロ心に訴えるようなものが多かったのだが、このあたりから、反戦的な雰囲気のものが作られるようになり、やがて、8・15シリーズそのものが終幕を迎えるのだが、このシリーズによって僕は日本の戦史というものを身近に学んだ気がする。この映画は確かその転換の境目に位置するものではなかったか。堀川弘通というどちらかといえば、地味だが、実力のある、あまり戦争映画とは関係なさそうな監督を起用することで、一風変わった作品になっている。映画館で見たときには、あまり昭和史を知らなかったこともあり、駆け足で日中戦争から太平洋戦争敗戦までを描いていくこの映画の無謀な試みを、なんだか薄っぺらな内容だと感じたのを覚えている。特撮部分はほとんどこのシリーズの他の作品のツギハギなので、妙に安っぽい感じもしたのだ。30年ぶりぐらい久しぶりにこの映画を見直してみて、やはりこの長さでこの内容は無謀だとは感じたが、それでも案外よくまとめられているのに感心した。監督の腕の見事さであろう。なにより東条英機役の小林桂樹のなりきり演技が出色で、東条の人間的な弱さと狂気がよく伝わってきて、この映画を引き締めていると感じられた。今日作られる戦闘場面にばかり力を入れた戦争映画より数段上質の作品であるにはちがいない。
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