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激動の昭和史 軍閥 (1970)

監督
堀川弘通
  • みたいムービー 7
  • みたログ 71

3.56 / 評価:36件

反省が足りなさすぎる…

  • ナイスルール さん
  • 2012年6月2日 7時59分
  • 閲覧数 2510
  • 役立ち度 12
    • 総合評価
    • ★★★★★

東宝の“8.15シリーズ”の中でも、この映画と『沖縄決戦』は、他の一連の作品とは明らかに異なる光を放っているように私は思う。
ところで、私としては、今でも“現実離れ”していて、できれば信じたくないのだが、それでも“事実”なのだから仕方がないのだが、父や叔父、そして大叔父たちの言うには、私の曽祖父は、戦前・戦中を通じて、東条英機氏と知り合いだったそうである。
始め、私は全然そんな話は信じていなかったが、私の死んだ兄が曽祖父の意向で、漢字こそ違え、同じ名前になっていたことや、あの阪神大震災で倒壊した“本家”の中から、曽祖父のアルバムが見つかり、その中にあった写真に、曽祖父と東条氏が仲良く微笑みながら納まっている写真や、太平洋戦争を紹介した本などに必ず載っているような陸海軍の軍人の方々と一緒に納まっている写真が出て来たのを見たとき、信じざるを得ないと思った。
生前の曽祖父の語った話の伝聞や、祖父母が存命中に幾度か東条家の方と当時の事などを懐かしく語り合ったときの話の内容の伝聞などを聞くにつけ、東条英機氏に関する描写は、この映画のそれよりも、案外と、東映の『大日本帝国』での描写のほうが近いようである。
同じく東映に『プライド』という東条氏を中心に据えた東京裁判の映画があるが、当時の氏にのしかかっていた大きな責任を、氏が如何にして全うしたかを描きたいが故に、東条家の人達も、映画の製作者たちも、少々感情移入が過ぎて熱くなっていたようである。
まあ、資料とか、当時の新聞記者や高級将校や政治家などの取り巻きの連中の証言や印象などは、氏に対して戦後の東京裁判によって貼られた“A級戦争犯罪者”というレッテルや、自己を正当化する為に他者を殊更に誹謗中傷する卑怯で潔くない心の弱さや、或る意味、自分達も世論の扇動を通じてGHQの言う後付けの“戦争犯罪”にどっぷりと加担していながら、当時の言論統制などを理由に自分達が負うべき重い責任からは言い逃れ、その分を当時の軍部や政治家に代わりに負わせて自己嫌悪すら感じない厚顔無恥なマスコミなどからの発言である以上、始めから偏向・曲解・捏造・拡大解釈されていて当然であろうし、また、そんなものを頭から信じ込んで、氏の人間的な部分を全く無視したような姿勢で取材をすれば、氏の事を深く知る親族や友人の方々が、そんな連中には堅く口を閉ざしてしまうのも、また当然であろう。
自分達が思想的なものをちゃんと持っていて、しかもその思想的なものを決して公然と表明する事なしに、記事の文面や映像の中にそれをちゃっかり隠して忍ばせ、公平平等に見せかけながらも、しっかり片方の思想に寄りかかった偏向報道を行い続けている現在のマスコミのあざとく姑息な姿勢を見るにつけ、ほんとうにコイツら、戦後の反省っちゅうか総括が全く足りないし、信用できないとつくづく思うのである。
この映画は、氏が天皇陛下の御前で、殆んど常軌を逸したような興奮状態で戦争の遂行を主張する顔のドアップと、直後の原爆のキノコ雲を映して終わるが、あれこそ“東条英機=狂気=戦争犯罪者”という構図を、まざまざと見る者に印象付ける作為の顕在化以外の何物でもない表現だと言えよう。
数えきれないほどの、憎しみや悲しみ、苦難と忍耐と痛恨の集積の典型のような激動の昭和史を、2時間余りの映画で表現する場合、そこに纏まった人間ドラマを複数挿入する事の不可能さや異様さが、この映画を全体的に物足りない印象で終わらせてしまったように私は思う。
最後に、この映画で、最も印象に残り、本人も最も“おいしいところ”を持って行ったと思われる出演者は、東条英機氏を演じた小林桂樹氏でも、反戦記事を書いて正義漢面をして喜んでいる加山雄三氏でも、ましてや、いつも通りの山本五十六を演じてルーチン・ワークを果たした三船敏郎氏でもなく、名も無き一兵卒を見事に素で演じきった、若き黒沢年男氏であろう。
「お前達(マスコミ)は、勝っている時は軍を持て囃し、負けてきたら非難しているだけじゃないか」
「負ける戦争だからいけないのか? それなら、勝つ戦争ならしてもいいのか?」
この台詞は、何度聞いても鋭く心に突き刺さる。
この言葉の慟哭の後ろに、それを発する画面上の黒沢年男氏の背後に、おびただしい数の名も無き英霊たちの無言の叫びと祈りがあるようで、暫し深く考えさせられる名言だと思えてならない。

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