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アリバイなき男

アリバイなき男

THE SECRET FOUR/KANSAS CITY CONFIDENTIAL

98

ser********

4.0

映画の歴史に眠る《砂金》たち

 人間の欲望の象徴である《砂金》がその醜い争いの末、手の平から風に飛ばされていく・・・名作「黄金」のラストシーン。  とかく人間の欲望というものはその砂金よりもちっぽけな存在である。ましてやそんな人間どもが大きな顔で、この母なる地球を支配した気になっている昨今の歴史を見ていると、いかに人類が進歩してもその《小ささ》はこの映画の作られた時代とは少しも変わっていない様に感じてしまう。    それは映画の歴史に関しても言える。映画が生まれてまだ百年ちょっと、そんな中確かに技術は進歩したが、肝心の《人間》は以前よりも退化し、金儲け主義オンリーの映画、いわゆるブロックバスターな映画だけが持て囃される時代になってしまった。映画を見て何かを学ぶといった歴史観は既に存在せず、流行一辺倒の三流ドラマが跋扈し、歴史的に見るべき映画までが「古臭い」の一言で片付けられる時代。  そんな時代に《砂金》の様な映画を見つける事はもう無に等しい。今から20年以上前はそんな砂金の眠る山々が至る所に存在していた。テレビ東京の深夜枠や地方のローカルで野球中継が雨天中止になった時にポツンと放映される無名の映画、はたまた大学の講堂なんかで一握りの映画ファンが掘り出してきた映画等々。でも今やそんな雰囲気は「ぴあ」の片隅にさえ存在しない。ますます《砂金》は遠くなりにけり。  だが!新しい時代に相応しい山々が実は目の前に存在していた!それはいわずもがな、この《ネット》という金鉱だった(笑)。  てなわけで、このヤフーの動画サイトの中にポツン、と存在していた一本の映画についてレビューしてみたい。いわゆるPD=パブリック・ドメイン映画の一本。だが、実に面白くスリリングな犯罪スリラーである事か。こんな映画がまだまだ埋もれている、それを探し出す我々こそ映画の【トレジャー・ハンター】である!(笑)  「アリバイなき男」。52年製作のアメリカ映画。モノクロ低予算、しかも無名の役者が主人公。何もかも今時の映画ファンにはスルーされる映画。だが!これが実に40年代のフィルム・ノワール映画の系譜として語られるべき面白さだ。  銀行強盗が起きる。その襲撃に《たまたま》利用された前科もちの花屋の男が誤認逮捕され、警察から屈辱の尋問を受ける。やがて容疑が晴れ釈放されるも誰も彼を雇ってはくれない。怒りに燃える主人公は自分をダシに使ったその銀行強盗を小さなヒントをもとに追い詰めていく、という話。だがその銀行強盗側も一筋縄ではいかない。犯人達は全員マスクで顔を隠していたためお互いの素性を知らない。しかも金はほとぼりがさめるまで凍結されている。そんな犯人達を主人公はどう追い詰めていくのか・・・これ、絶対タランティーノは見てます!でなきゃ「レザボア・ドッグス」は生まれていない!そんな雰囲気がプンプンする(笑)。しかも物語が進むうちに、黒幕のボスはなんと元○○(ネタバレになるので書きません)で、強盗の動機は金、ではなかったという展開になっていく。  とにかく低予算を逆手にとり、男達のクローズアップとその心理を熱く描くその演出!フィル・カールソンはこのテの映画の職人らしくラストまでギリギリと手綱を緩めず映画を魅せる。  そんな銀行強盗の悪役達がいいのだ!リー・ヴァン・クリーフとジャック・イーラム(若い!)それにネビル・ブランド!60年代から70年代にかけての個性派脇役達が目立ちすぎ!主人公、霞んでます(笑)  このテの映画はまだテレビが普及してなかった時代に大量に日本でも公開されては映画の闇に消えていったいわゆるプログラム・ピクチャーである。だが、そんな中にはまるでダイヤの輝きのような映画がたくさん混じっていたものだ。今、再評価される映画監督のほとんどはそんな世界に埋もれた偉大な【アーティスト】達である。当然、日本映画もしかりで、のちのテレビを支えたのもそんな映画の世界で埋もれていく《二流映画》を作り続けた人達だ。  だが未だに映画界はそんな彼らの偉業を無視し、映画の歴史の闇に葬り去ろうとしている。山田何某の映画は評価されるが、同時期○竹を支えた職人達は評価さえしない。そんな権威主義者達が作る映画の歴史もまた【歴史】だが、是非私は提言したい。  葬り去られた映画の【闇】にも目を向けてみて欲しい、と。   偉大な名作の影には、たくさんの砂のような映画が存在する。  そんな中には必ず《砂金》のような映画も存在すると。  「アリバイなき男」はそんな砂金の一粒にすぎない。だがそんな砂金は未だに映画の歴史に眠りつづけているのだ。  そしてそれを掘り出すのは《あなた》なのである!  てなわけでヤフー動画、サンキューです(笑)  

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