レビュー一覧に戻る
戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河

kaz********

4.0

戦争という大きな渦の中でどう生きるか

人は自らの欲望のために他の人の生命や財産を奪っていいものか、考えたら分かることも、集団の中では押し曲げられてしまうのだなと感じた。 第二部は、昭和7年3月の満州国建設から昭和12年慮溝橋事件によって8年にわたる日中戦争の戦端が開かれるまでを描く。日本の言いなりになる満洲国建設は国際連盟で不承認となるが、5・15事件などを通じて日本は軍部内閣を目指した。それは、権益拡大を目論む伍代財閥の利益と合致していた。国内では、反戦思想を持つ活動家を弾圧し戦争に邪魔になるものを踏みつぶそうとしていた。昭和11年2月の2・26事件を経て、参謀司令部では、内蒙工作派と対ソ防衛派対立した。一方中国では、張学良が共産党を介して蒋介石と相見え抗日民族戦線が結成される。昭和12年慮溝橋事件が勃発、俸勅命令が伝宣され日中戦争が開始される。 この第二部では、四組の男女の愛が軸になっている。一つは、伍代家の長女・由紀子と柘植の愛。アヘンルートの摘発で伍代家の利益を損なった柘植は帰国するが、由紀子に『女はいつまでも待たない』と言われる。二つは、伍代家・次男の俊介と人妻・温子との愛。俊介は英介に婚約破棄された温子をひたすら愛す。しかし、温子は狩野という男の妻になっており、狩野は姦通罪をちらつかせ二人に嫌がらせを行い、別れさせる。三つには、社会主義に傾倒する耕平と伍代家・次女の順子との愛。順子は耕平の役に立とうと世話を焼くが、主義に生きようとする耕平は信念を貫き留置場に入り拷問を受ける。順子の純粋な愛がたまらなく美しく哀しい。順子は由紀子と違って『いつまでも待っている』というのが対照的だ。四つには、医師の服部と中国人趙瑞芳の愛だ。抗日で倉庫爆破に加担した瑞芳を亡命させようと躍起になるが、逆に憲兵隊に捕まってしまう。階級を越えて国籍を越えて愛し合う自由を奪う戦争を許してはいけない。 あと、もう一組あげれば、朝鮮遊撃隊の徐在林と全明福。抗日戦線で中国人の白と対立し別行動をとるが、討伐隊に追い詰められ全明福は撃たれてしまう。全明福の亡き骸にすがって涙を流す徐在林の姿に感動した。

閲覧数104