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沈黙 SILENCE

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5.0

現役映画監督の巨匠、30年の構想。

監督スコセッシという名前は、もしかすると映画ファン以外には馴染みのない名前なのかもしれないが、紛れもなく現役の映画監督としてトップクラスの、(ランキングで数字にするのは馬鹿らしいことだが)世界的に見てもBEST16くらいには入る映画界の巨匠である。 そのスコセッシ監督が、30年も前から映画にしたかったという作品が今作『沈黙』(原作・遠藤周作)だ。 時代背景は日本人なら歴史の授業で習った『切支丹』、『踏み絵』のあたりの話で、誰もが知るあの禿頭のザビエルよりも、ちょっと後の話だ。 宣教師フランシスコ・ザビエルが日本にキリスト教をもたらした――それ自体は有名な話だが、現実をみてもわかる通りキリスト教というものは今日の日本ではちっとも根付いてはいない(せいぜいイベントとしてのクリスマス程度)。 世界最大の宗教の、根付くか、根付かないかの一線。 まさにその分かれ目となった時代。 そこに生き、そして殉職していった人々を生々しく描いた作品である。 もしかすると熱心なキリスト教にとっては少々、耳に痛い話かもしれない。(実際、原作者の遠藤周作は教会からはうとまれ、『沈黙』は禁書の扱いを受けているらしい?) だが内容は素晴らしいの一言なので、是非、劇場に足を運んでいただきたい。 原作を知らない人はもちろんのこと、原作好きにとっても、なかなか頷ける内容に仕上がっているので一見の価値はある。 ところで本作で自分が一番感動したのは日本人役者達の『演技』だ。 ちかごろの邦画はどんな作品でも役者の演技が『クサ』すぎて、正直言って下手すぎて見ていられないと思っていた。 だがスコセッシはそんな日本の演者をも『超上質』のレベルにまで昇華させているのが素晴らしい。 役者はその世界に置いて極めて現実的であり『自然』であり、特にイノウエの演技がなかなかに見ものなのだ。 邦画がだめだとか役者の演技がだめだとかよく聞くけれど、結局邦画を駄目にしているのは役者のせいではなく、監督の指導力なのではないか、と考えさせる意味においても、とても貴重な映画だった。 いずれにせよ我々日本人にとって考えさせる内容のものにしあがっている。1800円の価値は余裕であるものなので見て欲しい。 いや、むしろ違法視聴でもいいから見て欲しい。 とにかく、宗教や日本の国民性というものに対して色々と考えずには居られなくなる。そんな映画だ。

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