レビュー一覧に戻る
忍ぶ川

忍ぶ川

120

kin********

5.0

ネタバレ本物の純愛映画

端正なモノクロ画面が、ひとつの作品世界を作り上げている傑作。 栗原小巻が圧倒的に美しい。加藤剛も美男子の見本とでも言うべきか。 男女の直接の障害は、婚約者として現れる自動車のセールスマンだけだが、それぞれの家庭事情によって、簡単には結ばれない。女は貧しい、廓の射的屋の娘、男は兄弟が次々に自殺する呪われた血を持つ家の、最後に残った男。  言ってみれば、ふたりの紆余曲折だけを綴る恋愛映画の一本なのだが、巧みな演出と画作り、配役の妙で、ひたすら美しく謳いあげ、単なるメロドラマをはるかに超越、純愛に昇華している。  終盤、男の郷里津軽へ、女を連れ帰ってから、家族たちが労わりあうなかで、ふたりが結ばれるくだりは圧巻。これといって事件が起こるわけではないが、男のナレーションが言う「気持ちが直に触れ合う」感じがよく出ている。映画でこれほど美しくセックスを描いた例を、他に知らない。    素っ裸でふとんに入り、馬橇、そしてウミネコのイメージ。映像表現のひとつの極致と言っていいと思う。  池袋文芸坐キネ旬ベストワン特集で「サンダカン八番娼館」と併映での鑑賞。つまり「サンダカン…」もベストワンなのだが、撮影の差が歴然。それがそのまま、両作の差になっていると思う。

閲覧数1,119