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忍ぶ川

忍ぶ川

120

yad********

4.0

「最も美しいキス」部門第1位

かなり昔、ある雑誌の読者アンケートにおいて、 邦画のキスの名場面の問いに、 「知性的なキス」と「最も美しいキス」の両部門で 1位を獲ったのが、この『忍ぶ川』だったらしいです。 新婚初夜、お互い全裸になって交わすキスシーンです。 知性的かどうかはともかく、これは間違いなく 邦画史上では屈指の名場面です。 そして何より初見の時、僕が一番びっくらこいたのは、 栗原小巻のヌードシーン・・・(やっぱり俺はここに目が(恥)) それにしても、美しいキスなら『また逢う日まで』の “ガラス越しのキス”の方が上位に来そうだけど・・・ 流石に古すぎるか(苦笑) いきなり艶っぽい話でレビューを始めましたが、 事此処に至るまでの男女の、出会いからお互いの過去・現在、 複雑な家庭の事情をさらけ出し合う過程こそは、美しく、暗く、 こそばゆく、愛しい純愛物語。 しかし、この“暗く”っていうのがミソでして、この作品がただのメロドラマの域から脱却し、 ともすれば反差別といったメッセージをも含んだ社会派ドラマの域に広がっています。 例えば、志乃(栗原)の父(信欣三)の「いい男だ」、 哲郎(加藤)の姉香代(岩崎)の「私、生きてていいの?」、この双方の台詞は、 どちらも感動的で、作品の奥行きをぐっと広げた場所で輝いてます。 最初、何故モノクロームなんだろう(72年の作品)・・・と訝しく思っていたのですが、 終盤にきて雪国の豪雪風景・・・痺れました。 こりゃむしろ色が無い方が情緒豊かです。 蒸気機関車、その黒色、豪雪、駅、老いた母、凍えながら降り立つ栗原小巻、 加藤剛、彼の手には、草箒(ホウキ)・・・笑う所ではありませんよ。感慨深い所です。 レビュー冒頭の美しいキスシーン・・・“絵”は決して美しくありません。 なんともぎこちないです。そのぎこちなさが、とても美しいのです。 夜明け前、鈴の音と馬ソリが雪道を進む幻想的なシーンも美しいです。 ここで交わすキスシーンも大変印象的です。 これは、いくら頑張ってレビューしようとしても、どんな賞賛の言葉を尽くしても、 逆に穢してしまいそう・・・是非ともその目で御覧頂き、体感して欲しいです。 この作品を1位に選ぶその雑誌の読者層は素晴らしいです。 因みに女性雑誌らしいです。 残念ながらこのエピソードを紹介している本には、 雑誌名も何時頃のアンケートかも書いてません。 今なら、絶対に1位は無理でしょう。時代にそぐわない・・・ そして今はもう、こんなキスシーンを撮れる監督も役者も数少ない・・・ 絶賛のレビューを続けておいて星4つなのは、全編ずっとモノローグで進み、 僕は、これがどうにも嫌いなタチでして・・・ そんな私的な理由でございます、ゴメンナサイ(苦笑)

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