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海軍特別年少兵 (1972)

監督
今井正
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4.00 / 評価:19件

軍内部の暴力と、悲惨な戦闘を知る

店でDVDが2000円台に下がっていたので、鑑賞予定リストに入れました。

子供のころ観た(1970年頃の)日本の戦争映画は、今とは違い、反戦的なものと、兵士(特にパイロット)の大活躍を描くものとに分極化していた。戦争の記憶を持つ人が多く、それぞれが経験した・聞いた戦争の局面をもとに描いたのだろう。

反戦的な側の代表は、オールナイト上映会が懐かしい『人間の条件』や、特攻隊についての『雲流る果てに』などで、この『海軍特別年将兵』も、そのジャンルに属するようだ。

反戦映画が重視するのは、(1)軍隊内部の暴力【注1】、(2)悲惨な作戦や戦争で、さらに(3)空襲等での国民の被害だが、(4)中国など他国民の被害【注2】を描くものは少ない。この作品では、(1)と(2)を見ることができる。

日本軍の組織内暴力、無謀な作戦、玉砕は、多くの戦争記録書や、ニューギニア戦線に送られた水木しげる先生の漫画などでも描かれているので、事実であることは間違いない。

しかし、21世紀の戦争映画では、軍人を礼賛もしないが、逆に戦争に否定的でも(1)(2)は控えめだ。もっとも、軍隊内で広く行われた兵士に対する暴力の制裁は、それでも多くの映画に1度は登場する約束になっている。回天特攻を扱った佳作『出口のない海』では、そうした上官によるビンタが起こるが、そのあと上官は口の血をぬぐえとハンカチを渡す。海軍にはジェントルマンがいたのか。『少年H』はなかなかまじめに、学校での軍人教員による体罰や、特別高等警察による拷問を描いていた。(2)は、『男たちの大和』や『太平洋の奇跡』で、ある程度リアルに再現されていたが、時間的には短い。

昔見たような悲惨な戦争映画は、今の時代には作りにくいのだろう。それを、昔は反戦イデオロギーが過剰だったと評する人もいるだろうが、やはり、戦争の記憶が鮮烈なうちに、フィルムに焼き付けておこうとする映画人が残した仕事とみるべきだろう。

戦争の直接の記憶が残る時代の反戦映画は、戦争と旧日本軍の歴史を学ばないまま「日本を守った」「アジアで歓迎された」と美化する本も多い今の日本にとって、特別な価値を持っているわけだ。

 【注1】日本と同じファシズム政治に陥ったドイツやイタリアの軍を描く映画でも、上官による部下への暴力のシーンを見たことがない。ただ、ドイツに関する戦争映画では、戦場離脱などを図った兵を、ナチス直属の特別部隊(SS)が処刑するシーンが、これもお約束のように登場する。(『レマゲン鉄橋』『ヒトラー最後の13日』『ドレスデン』)

 【注2】旧日本軍が南京やシンガポールで行ったと同じく、ナチスドイツ軍が捕虜や住民を処刑した事件が、歴史書で伝えられる。ドイツ軍による虐殺シーンを含む映画は、おそらくフランスと、イギリス(『シャーロットグレイ』)、アメリカ(『バルジ大作戦』)だけでなく、ドイツでも作られている(『スターリングラード』[1993年])。

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