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賞金首 一瞬八人斬り

aki********

4.0

ウエスタン時代劇!

若山富三郎演じる錣市兵衛が活躍する、ウェスタン時代劇シリーズ。 ありえないことが連発する奇天烈な怪作で、主人公以外ほとんど死んでしまう という身も蓋もないドラマ展開に、徹底的なマカロニ・ウェスタン風味の演出 トーン。でも作り手たちが「これが面白い」「これがカッコいい」と思い込ん でいるところの感覚が、かなりズレていると思う。 髪がパンチパーマで、口髭を蓄えた市兵衛が、賞金稼ぎの衣装に着替えて、馬に跨ると、なんかメキシコ風だ。レンガ色の赤茶けたズボン、皮製っぽいチョッキを着ていて、ソンブレロみたいな大きな陣笠を首から背中に掛けている。馬の蔵にはガンホルダーが付いていて、そこにショットガンみたいな銃を収めている。江戸時代の日本にはありえねー格好だ。BGMもメックス風。 市兵衛が狙撃中で殺害した夜叉狼の妹、飛び天童(加藤小夜子)が、「きさま、兄じゃを殺したな?」と襲い掛かってくる。天童は名前の通りよく飛ぶ、ピチピチのワイルドな「あずみ」みたいな衣装の小娘なのだが、市兵衛は「違う!俺が殺したのではない!」と攻撃を受け流しながら必死に言い訳する。え?あんたじゃん?あんたが殺したんじゃん?とわけがわからなくなる。 知的障害者で聾唖の乞食(遠藤辰雄)が市兵衛についてくるようになる。こいつは一体ナニモンじゃい?顔は垢で黒く汚れ、髪はカーリー風の茫髪、着物はボロボロ。宿場ではこいつのことを「死神」と呼んでいる。こいつに関わって死んだ奴は数知れない、というのだ。しかし、遠藤辰雄が、こんな役やるかね?もんのすごい怪演なのだが。 約束の場所に市兵衛が行くと、黒服の男のほかに尾州藩士(田中浩など)がいて、黄金を積み替えると馬で山を降りて行った。こういうところもかなり支離滅裂だ。黄金の質量がめまぐるしく変わっている。最初に運搬隊がそれを運ぶシーンは、大げさな隊商を編成し非常に大量にあるというイメージだったのが、死神の棺桶に移すとせいぜい棺桶二つ分で大八車で人間一人で運搬できてしまう。そして今度は馬5,6頭に分散してはいるものの、馬の軽やかな走り具合からは、黄金はひどく目減りしてしまったようだ。いくらウェスタン風味に凝ってみても、こういうディテイルがおろそかなところが、メタクソにダメ。200貫匁はいかに死神が怪力でも、人間一人で運べる重量ではない。 市兵衛は馬で尾州藩士や黒服の男を追う。峠道を外れて尾根沿いに山を下った市兵衛は、例によってライフル銃(?)を組み立てると、黄金を積んだ馬を疾走させる尾州藩士たちを次々と狙撃して倒す。ありえねーよな。いわゆる普通のライフル銃には、弾道を安定させるためのスパイラル状の溝が銃身の内側に掘り込まれている。しかし市兵衛の使う銃は銃身が短くて、とても遠距離の狙撃に使えるとは思えない。スコープをつけたから狙撃銃、という発想の強引さと都合よさ、重力や風の影響を試し撃ちの調整なしでは克服できない、という常識を無視した展開に思わず失笑。 基本的にダメだけどテンションは高くて、カルト映画としてそれなり。 監督の小沢茂弘は仁侠映画の情の深い演出で名を上げた人だが、今は京都で占い師をしているとか。きっとその占い、当たんねーぞ。

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