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サンダカン八番娼館 望郷 (1974)

監督
熊井啓
  • みたいムービー 76
  • みたログ 183

4.26 / 評価:69件

映画としての出来は……

  • cyborg_she_loves_me さん
  • 2020年11月14日 1時37分
  • 閲覧数 355
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

戦前の日本がこういう暗黒面を持っていたことを世に知らしめた功績が非常に大きい映画なのは間違いありません。今でも「からゆきさん」とは何かを知らない人は多いと思うので、誰もがどこかで一度は見てほしい映画だと私も思います。

 が、「映画」として見た場合には、決して出来はよくない作品だとも思います。
 出来の悪い「再現フィルム」のたぐいを見ているような感じで、「ああこんなことがあったんだなあ」と知るために見る分にはいいと思いますが、映画としては、「作り物」感が露骨すぎて、感情的に入り込めません。

 例えば晩年のサキ(田中絹代さん)が住んでるボロ家。いや、貧しさを強調したいのはわかるけど、ここまで障子が全部破れてちゃあ冬は凍死するでしょう。ここまで畳やら鍋やらそこらじゅうに虫がうじゃうじゃといたら、落ち着いて食べることも寝ることもできんでしょう。
 そいでまた、証言を得るためにそのボロ家に住みこむ三谷圭子(栗原小巻さん)は、神々しいばかりに美人すぎ、その挙動はまるで深窓の令嬢みたいに優雅すぎて、汗まみれ泥まみれになりながら底辺女性史を発掘している研究者には到底見えない。

 制作年代が年代だけに露出シーンを極力入れない方針がとられているせいもあるでしょうが、若き日のサキ(高橋洋子さん)を始めとする娼婦たちがどれほど悲惨で屈辱的な生活を強いられていたかの描写も、ほんとに通り一遍でリアリティがありません。

 そんな調子で私は、明治~昭和史の暗黒面を勉強するための教材というような意識で見終えました。映画として感情移入することは最後までできませんでした。

 以下余談。
 私は子供の頃これが「砂の器」との2本立てで公開されたのを、「砂の器」の方を見たくて、父と一緒に見に行きました。が、父は最初の方の、栗原小巻さんが村の男に犯されそうになるシーンが映った途端、子供に有害な映画だ、と思ったのでしょう、「帰るよ」と言い捨ててさっさと席を立ちました(もちろん私も後を追いました)。まあもちろん、仮に最後まで見たとしても子供の私には意味はわからなかったとは思いますが、性に関連することにちょっとでも触れることを重罪みたいに思っていた当時の風潮を感慨深く思い出します。そういう風潮の中でこういう映画を作った熊井啓氏を始めとするスタッフの勇気には全面的な敬意を感じます。現在の目で見た感想を上では書きましたが、日本映画史上では不朽の意義を持つ重要な作品であることには異論の余地はないと思います。あんまりいい思い出のない映画だったので最近まで見ずに来ましたが、意を決して見て、いろいろな意味で良かったです。

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