レビュー一覧に戻る
田園に死す

4.0

ネタバレ地獄の田園

78点 寺山修司の自伝的映画。 映像には相変わらず毒きのこめいたけばけばしさがあり、演出はだいぶ挑戦的。 白塗りの少年と鳴りっぱなしの柱時計の冒頭が、お化け屋敷の入り口に立った時のようなわくわく感をあたえてくれる。 狙いすぎでくどい部分もあるけど、「書を捨てよ町へ出よ」よりも演出がさらに進化している印象で、とくにエロ描写がグレードアップしていた。 主人公の少年が言うように地獄みたいなエロスに仕上がっていて、仏壇の前で少年が犯される終盤のシーンの、悪夢のような空気感は絶品だった。 少年の頃の主人公と現在の主人公がいっしょに将棋をさすシーンも、今となってはありがちなシュールさなんだけど、わるくはない。 ただ、画面に字を書くクセはやっぱりやめてほしかった。 単純に詞としての出来はよかったけど、ストーリーの流れに水をさしているようで邪魔に感じた。 ストーリーは「書を捨てよ町へ出よ」でも感じさせたように寺山修司のマザコン気質がうかがえる内容で、今回は主人公が本当の自由を獲得するために母親を殺そうとする。 が、食事の準備をする母親をまえに彼は座ってるだけでなにもできない。 殺すことをやめて母親と食事をとり「自由」をあきらめた瞬間、部屋の壁が倒れる。 外にあらわれたのは新宿の雑踏。 都会の喧騒にかこまれて、ひそやかに母親と息子が食事をとるラストシーンは、生活へと溶けていった寺山修司の夢を想わせる。 寺山修司の映画の代表作といえば「書を捨てよ町へ出よ」だけど、個人的には「田園に死す」のほうが好き。

閲覧数1,724