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地上最大のショウ

地上最大のショウ

THE GREATEST SHOW ON EARTH

152

shinnshinn

4.0

グリングリンサーカス。

1952年の作品で、監督はハリウッド映画草創期から活躍した大御所セシル・B・デミルです。子供の時分にブラウン管テレビで見た記憶があります。淡い記憶では大作の割には大味な映画だったと思ったのだが、当時の小学生のガキには空中ブランコのスリルは分かっても、サーカスの運営の事や、団員たちの微妙な恋愛模様は理解出来ない(笑)。 大スター・チャールトン・ヘストンがオープニング・クレジットの3番目なのは、彼がまだ、映画出演2作目とほぼ新人に近かったためなのか。「アニーよ銃をとれ」(50)で大スターになったベティ・ハットンや芸歴では先輩のコーネル・ワイルドの方が格上だったという事かも。チャールトン・ヘストンが有能で男気のある大サーカスの責任者役で、彼の後のカラー(アメリカ人好みの力強いリーダー)を決定づけるような、威風堂々とした芝居をしています。主役の風格がすでにあるのだ(といっても29才なので、決して早咲きという訳でもない)。この後、ヘストンは同じデミル監督で「十戒」(56)、「ベンハー」(59)と超大作で主役を張ることになる。 ベテラン俳優のジェームズ・ステュアートが映画の最後までピエロ(道化師)のメイクなので、淀川長治氏が「ああ、このピエロがジェームズ・ステュアートだったのかぁ」という出かたをしていたと言っていたが、オープニング・クレジットで初めからジェームズ・ステュアートの名前の下にバトンズ・クラウンとハッキリとタネ明かしをしている(笑)。この当時のクラウンは健全だ。マガマガしいイメージはない。スティーヴン・キングのおかげで不吉なアイコンになるのはまだまだ先のこと(笑)。 見どころは昔懐かしい大サーカスです。テントに籠もった観衆の熱気です。本作は実際に存在したリング・リング・ブラザース・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスという自前のサーカス列車でアメリカを巡業するサーカス団のお話です。名前が長いのはバーナム・アンド・ベイリー・サーカスをリング・リング・ブラザース・サーカスが買収したためです(三菱東京UFJみたいなことだ)。蛇足ですが、バーナム・アンド・ベイリー・サーカスはヒュー・ジャックマンが主演した「グレイテスト・ショーマン」(17)の主人公P・T・バーナム氏が作ったサーカスで、サーカス列車や像をショーの呼び物にしたのはバーナム氏の発案だそうです(吸収合併されたのは彼の死後)。 何しろ、CGのシの字も無かった67年前の映画なので安っぽい模型列車や、見え見えの合成撮影など興ざめする部分もあるのですが、「七人の侍」(54)の2年前にこんな大がかりな総天然色大スペクタクル映画(いまは総天然色もスペクタクルも言わないか)を作るハリウッドには資本力と先見性を感じます。乱暴な言い方だが、いい意味でスピルバーグやルーカスがやった事は、つまり本作の延長線上にあると思う。大がかりな仕掛けや視覚で観客をおどろかしてやろう!と言うサービス精神とでもいうか・・・。 サーカスの花形で空中ブランコの大スター役がコーネル・ワイルドです。いい加減なプレイボーイでいわゆる<色ワル>なのかと思いきや、意外といい奴で好感が持てる。チャールトン・ヘストンも恋愛には執着心が薄いのか、2人の間をベティ・ハットンが行ったり来たりするのだが、<血みどろの愛憎劇>にはならない(笑)。デミルは家族全員で見に行ける娯楽映画にこだわったのだろう。まったくもって古きよき映画です。 81年、僕はたまたまカリフォルニアでリング・リング・サーカスを観たのだが、そのときのテント内の蒸れるような人々の熱気は今でも憶えています(匂いも独特・笑)。芸をさせられる像や、鞭でコントロールされる虎、口をふさがれた熊を見ても正直、可哀想だとは思わなかった(みんなと一緒に笑っていたのだ)。2017年の5月で150年の歴史を持つリング・リング・ブラザース・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスは幕を閉じました。動物愛護団体からの批判が強かったらしい。言い訳なのだが、僕もテレビで見る闘牛や土佐で見た闘犬ショーは、ちょっとどうも・・・と言う気になる。焼肉をジャンにべったりと付けて喰いながらなのだけれど・・・。本心からビーガンには頭が下がります。彼らは釣り針に付けるミミズの心配までしているのだ。

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