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ある映画監督の生涯 溝口健二の記録

kih********

4.0

溝口さんは絹代さんタイプが好きなんだ。

これが果たして映画といえるかどうか。関係者にインタビューをしてそれを繋いだ(編集した)だけだ。映画人を映画にするというのは、こういう手法しかないのかもしれない。それでもこれを見た。映画レビュー500本になったのを機に、少し「映画というもの」を知り(考え)、映画の観方に幅なり深みなりを持ちたいと思っているからだ。しばらく“映画を題材にした映画”を見る。手っ取り早い勉強法。  映画には必ず“女”が登場するのだが、溝口映画では、女性は単なる登場人物ではなく題材そのものだ。女が主題なのだ。私の場合には、人並みの女性遍歴や交友関係というものがなく、なんの面白味もなく退屈な人生が終わりかかっている。今更女性の研究が必要なわけでもなく、その気もない。こういう監督さんの映画で、「ああ、そうか」と思うのが精いっぱい。  この監督さんは殊更に田中絹代さんがお好きだったらしい。田中さんご自身の回顧インタビューは真に迫っている。好き合っていたか、プロポーズがあったかどうか、そういうことはどうでもいい。溝口氏が女優・田中絹代を理想(好き? 美しい?)に思っていたことは事実だろう。ということは、彼が描いた彼女を見れば、彼の女性観というのが分かるということだ。  しかしねぇ、彼の女性観を通して自分の女性観を発展させることもないだろう。ひょっとしたら、彼もまた巷間いくらでも居る単なる女好きなだけだったかもしれないし、フェミニストの一人だったかもしれないし、なんとかコンプレックスだったのかもしれない。  うらやましいのは、好きな女性を題材にして、好きなだけ映画を撮ったことだ。それが職業だったことだ。それが認められて、数々の賞を取ったということだ。  彼が好きだったという田中絹代 ―― 私も好きだ。

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