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本陣殺人事件

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4.0

金田一耕助がこの世に登場する最初の作品

この作品は、本邦初の本格的推理小説とも言われ、それまで日本家屋には不向きとされていた密室殺人を戦後初めて描いた作品としても知られる。また江戸川乱歩の明智小五郎と並び称される名探偵:金田一耕助がこの世に登場する最初の作品であり事件である。機械的なトリックが面白い。 当時、第二次大戦中は軍の指示によって探偵小説は禁止されていたため、終戦によってこれが書けることになった喜びから、夢中で書いた旨、作者が語っている。彼の戦後最初の作である.1975年の二度目の映画版では中尾彬が金田一を演じたが、この時は当時の世相を反映したジーンズ姿で登場した(ちなみに横溝正史はこの中尾金田一をたいそう気に入っていたという)。 本作は密室殺人の謎解きが最大のテーマであるが、横溝正史の素晴らしいところは、その謎が解明された向こう側で、日本の因習や風土といった日本人そのものを浮き彫りにしている事にある。田舎の旧家という閉鎖された世界…まさに土着的な日本の風土が凝り固まった本陣。人間の持つ価値観というものは、その人間が生まれ育った環境によって大きく変わる。そこで観終わった後に、ハッと気づいた。そうか!あえて時代設定を昭和初期から現代にしたのは、今でも田舎に残る封建的な因習の恐ろしさを表現するには現代にした方が、よりショッキングだからだ。 「それができるくらいなら、こんな事件は、起こりやしません。」被害者の伯父である久保銀造が「どうして殺すくらいなら…」と嘆いた時に金田一が言う台詞。事件はどれも、行き場の見失った人間が起こすのだ。 横溝正史の代表シリーズを、“実験映画の大家”高林陽一が手掛ける。この作品の後、角川-東宝-市川-石坂:金田一という傑作シリーズが現れた時、横溝正史の数多い名作の中で この作品のリメイクがなされなかったのが 非常に残念.

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