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不毛地帯 (1976)

監督
山本薩夫
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3.78 / 評価:57件

山崎豊子にあやまれ

  • yuki さん
  • 2019年5月26日 17時32分
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    • 総合評価
    • ★★★★★

原作は山崎豊子で、航空戦闘機の汚職事件を描く。ロッキード事件が発覚したのは映画の撮影中だったということだが、恐ろしいほどまでに物語と史実が符号している。
山本薩夫監督にとっては『白い巨塔』『華麗なる一族』に続く山崎豊子の映画化である。『白い巨塔』では橋本忍の整理された脚本に助けれてスッキリとまとまった映画になっていたが、こちらのほうはダラダラと傍流の話が繰り返され、本筋が頭の方に入ってこずストーリーの流れがよく理解できなかった。本筋の汚職事件が散漫になってしまっていた印象だ。

さらによくないのが、根っからの左翼である山本薩夫が勝手な改変を行ってしまっていることだ。冒頭のシベリア抑留では、昭和天皇の戦争責任の追及に始まり、主人公(壹岐)の娘には「日本政府は右翼と暴力団を雇って安保運動を潰させた」と言わせる始末。
映画の演出意図としては、戦争の責任を取らず生き延びた天皇と、気づいたら汚職事件の責任者となってしまった壹岐をオーバーラップさせたかったのかもしれないが、あまりうまく機能してるとも言えず。安保運動の下りなんて唐突すぎて不自然だし、それに政治批判を娘の口から直接言わせるのはあまりに芸がない。あれじゃ山本のイタコだ。
アジ演説をやりたいなら自分の映画でやりなよ、というのが正直な思いである。こんなシーンを挿入する暇があったらもっと本編を煮詰められただろうし、自分の原作を勝手に演説のダシに使われた山崎が気の毒である。

この改変を期に、それまで続いた山崎と山本のタッグは解消されるが、それも当然だろう。
次の山本の大作となる『皇帝のいない八月』も政権批判がしたいだけのひどい愚策だったが、晩年の山本はあまりにも左翼人として振る舞いすぎる。

ポール・バーホーベンが『スターシップ・トゥルーパーズ』でハインラインの右翼的原作をあえて誇張することで、痛烈な全体主義批判として仕上げたのは有名な話だが、作家なら他人の褌で政治主張するにもそれくらいの工夫は欲しいものだ。

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