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もっとしなやかに もっとしたたかに

tam********

5.0

LOVE LOVE 森下愛子

藤田敏八監督の奇妙な切れ味を感じる。 本作のオリジナル脚本は、キネマ旬報誌上で読んでいた。 監督レベルでの変更がよくわかったため、特にこのような感じ方をするのかもしれない。 なかでも、なんといってもラストシーンにつながるカタストロフィーはショックである。 僕の予想との差が大きすぎたせいもあるが、いわゆる笑いが凍り付いてしまった。 実際、観客の中には主人公「勇ちゃん」の突然の死を理解できなくて、イメージシーンと取り違えて、笑い続けていた人もいたくらいだ。 この笑いも結局はあまりの運命のいたずらに気づき、ストプモーションのまま、画面に縛り付けられていたが。 これをもって、ゴダール云々・・というわけではないが、すくなくともいまの邦画の閉塞状況を打ち破ってくれるであろうとの予感のする、新しい感覚に触れたことは否定できない。 しなやかに、そしてしたたかに生きたのは、何のことはない「勇ちゃん」なのではないか? 女房に逃げられたとはいっても、子供は姉に任せっぱなし。 といって、女房を血眼で捜しているわけでもない。 そうこうしている内に、彩子に愛を覚えていくなんて、 実にしなやかで、したたかなのである。 小料理店のSEXシーンなどは、勇ちゃんの気持ちそのままストレートとしか言いようがない、 これぞロマンポルノ。 「愛」だの「人生」だの「永遠」だのといってるうちは生々しい愛の実像なんてものを観客には説得することは覚束ない。 というわけで、森下愛子ふんする彩子がタイトルの意味かと予断していたが、どうも違う。 また、ひょっとしたら簡単にくたばってしまった勇一も決して「したたか」ではなかったかもしれない。 結局、しなやかに、そしてしたたかに生きることの難しさが残っただけなのかもしれない。 君枝(高沢順子好演)の、ふてくされた表情は、その代償を負った人間の真の姿なのだろう。 本音: 森下愛子を見てるだけで楽しいのです。これもシネマの楽しみ方、しなやかに楽しまねば。 記:1979年7月24日

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